第37話 官僚
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「前々から貴官とはお話したいと思っていたのよ」
渡りに船だったわ、と言って長すぎる足を組んでコーヒーを飲む姿は、ファッションモデルですと自称してもあながち間違いではない。長身で丸顔。ぱっちりとした二重瞼に濃い群青色の瞳。頭の後ろできつく纏めたブラウンの髪がブロンドだったら、金髪の孺子女バージョンというべきか。姉君と明確に違うのは憂いる表情とか瞳の色とかではなく……典型的『ファッションモデル』なスタイルということ。
「大尉、視線が胸に向かっているわよ。貧相で悪かったわね」
「いえ、むしろそちらの方がスラっとしててかっこいいですよ」
「ありがとう。でもそれセクハラだから、今後は気を付けてね」
女性は男性の視線に敏感というが、おそらくは彼女にとってはお決まりのネタなのだろう。耐えるとか過剰に反応するいうより、鼻で笑い飛ばすというスタイルなのか。地球時代から綿々と生存するセクハラ親父議員も、逆に鼻白むに違いない。
「さてお遊びはこれまでとして、ボロディン大尉。本日のご来訪の要件をお伺いしたいのだけど」
「星域における治安維持について、現在司令部で新案を検討しているのですが、特に経済産業分野においてご協力を願う件についてです」
「マーロヴィア経済産業庁が軍の作戦に協力できることなんてないとは思うけど?」
「管区軍司令部は今後当星域を通過するすべての商船について、可能な限り軍艦による護衛船団下に組み込めるかどうか検討しております」
俺の返答に、それまで笑みすら浮かべていたパルッキ女史の顔が急激に変化していく。まずは目から、そして顔から、およそ感情という感情が消えていく。恐らく彼女の目に映る俺の顔も同じようにドライに変化しているだろう。官僚と軍人。立場職責は異なれども、お互いにリアリズム教の下僕だ。頭の中で整理しているのか、数分間壁に掛けられた小さなスミレの絵を見つめた後、俺に鋭い視線を向けて言った。
「……無茶な要求ね。軍が産業の基幹たる商船航路を統制しようということかしら?」
「統制するつもりはありません。軍艦による護衛を付けることで、より安全な運航を保証することが目的です」
「護衛を付けない商船の安全は保障しない。そう言外に運航側の萎縮を求めているのだから、統制以外の何物でもないわ」
パルッキ女史の言うのはまさに正論だ。ブロンズ准将も言っていたように、護衛船団は直接航路封鎖するような民間航路の軍事統制ではないとはいえ、宇宙航海法の航行の自由及び統制条項に抵触する恐れがある。
ただし原作における救国軍事会議がハイネセンで実施した経済統制とは異なり、護衛船団下に入るよう強制するものではない。また通信統制も実施しない。
そして前提条件として正反対なのが、ハイネセンは一惑星だけで一〇億人居住し生産
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