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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第36話 鎌研ぎ
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報戦の最前線で戦って将校推薦を受けた相当の強者だろう……

「この作戦が貴官の立案である事はその部下に伝えておく。ただし君には作戦指揮の責任も負ってもらうぞ」
「承知しました……できれば後方参謀も一人お貸し頂けると助かるのですが」
「そちらは後方勤務本部から通達が来るだろう。これから私が各部部長会議に諮るから、すぐに管区司令部へ連絡がいくはずだ」
「度重なるご支援、感謝いたします」
「なに、シドニー=シトレの五代ぐらい後の統合作戦本部長に恩を売れたと思えばお安い御用だ。もっとも馬鹿がつくほど正直な君に情報部長の職責は無理だと思うがね」
 そう言うと、超光速通信はブロンズ准将の方から切られた。俺は信号の切れた画面に敬礼しつつ、溜息をついた。

 情報戦という正濁双方を操らねばならない分野に身を置くブロンズ准将が、なぜ今後一〇年で中将に昇進して後に、厨二病のような救国軍事会議に身をゆだねる事になったのだろうか? 正義感という素地はわかる。だがそれだけでトリューニヒトという男の内面を嫌悪したからなのだろうか。まだ俺はヨブ=トリューニヒトという男には巡り合えていないが、情報部のエキスパートが忌み嫌う口舌の徒は、フェザーンの黒狐をも上回る毒々しさなのだろうか。

 一方、後方勤務本部からの返答は申請したビュコックの爺様の方に直接届いていた。その結果を聞くようファイフェルを通じて司令官室に呼び出されてみれば、果たして爺様の気圧はかなり低いものだった。

「交代は当面見込めない、とのことです」
 目を閉じて腕を組み半ば眠っているような、不貞腐れた爺様の代わりに、ファイフェルが俺に囁いた。
「後方勤務本部長閣下がおっしゃるには、「人事異動を行ったばかりなので本部には当面余剰人員などいない。管区内か隣接するライガール星域管区かガンダルヴァ星域管区かトリプラ星域管区から貴官が都合をつけろ」でした」
「マーロヴィアとまではいわなくとも、全部辺境の星域管区ばかりか。その中でも大きいのはガンダルヴァ星域管区だが……確か辺境中核指定を受けている星域だから、星域司令官は通常通りだと少将になるな……」
「はい。例の機雷の件もありましたので、すぐに星域司令官のロックウェル少将閣下に通信を入れたのですが」
「……が?」
「後方勤務本部長閣下と殆ど同じ返答でした……」
 ファイフェルは下唇を噛みしめながら、左手で胃の辺りを摩っている。

 原作通りのロックウェルであれば、性格はともかくとして後方勤務のスペシャリストであり、能力の面から言って十分有能な指揮官だ。ただ帝国軍との前線で切った張ったしてきた爺様と、後方勤務のエリート士官では歩んできたキャリアが全く違う。この二人に熱い友情が産まれていた可能性は限りなくゼロだ。今のファイフェルの言葉からすれば、兵
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