第36話 鎌研ぎ
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言って、はいそうですかと優秀な人材を派遣してくれるだろうか……答えはNoだろう。
国防委員会に人事を上申する方法。これは悪手だ。仮にマーロヴィア行政府の人間を挟んだにしても、軍の組織体系と規律を掻き乱す行動に他ならない。行政府としても自身の統治能力を中央から疑われる(すでに疑われているにしても)行動はこれ以上したくはないし、現地軍部にしてほしいとは到底思わないはずだ。何でも使える手は使わなくてはならないとは思うが、事は政治と軍の関係という巨大な問題にまで発展してしまう。
「儂は、統合作戦本部長と戦略第一部長にこの作戦案を提出し、改めて助力を仰ぐつもりじゃ」
俺の返答に、爺様はたっぷり二分後に力を込めてそう答えた。爺様の軍人としての決断だし、聞いた俺も腹の底からホッとした。
「モンシャルマンにも伝手はあるし、ジュニアにもそれなりの伝手はあるじゃろう。行政府には当然働いてもらうが、現時点では我々は我々の職権の許す範囲で仕事をする。それでよいな?」
「承知しました」
「よし、ではそれぞれの仕事にとりかかろう。戦の九割は準備で費やされるものじゃからな」
爺様のその言葉が合図となり、俺は敬礼して司令官室を後にすると、纏めた作戦案を暗号化した上でマーロヴィア星域の情報参謀が更迭されることを匂わせつつ、ブロンズ准将へと送信したのだった。
そして二日もかからずして、ブロンズ准将は俺に超光速通信による直接通話を求めてきた。
◆
「……君の作戦案は読ませてもらった」
司令部専用超光速通信装置の画面に映る収まりの悪い明るいブラウンの髪を持つ准将は、画面の目の前で直立不動の姿勢を崩さない俺を、文字通り苦虫を?み潰した表情で見つめている。
「同盟憲章と地方行政法と同盟軍基本法の幾つかに抵触する可能性がある……あぁ君が言いたいことは分かっているとも。我々情報部がそれらの法律に関して、時々非常に疎くなる事があるのは事実だが……」
「法律を犯すような作戦案ではないと、小官は考えておりますが……」
白々しさ満点の俺の返事に、今度こそブロンズ准将の眉間に皺がよった。
「有人星系の小惑星帯を実弾機雷で封鎖することが『解釈の違い』で済むのかね?」
「星系鉱区の合法操業指定範囲外にて実施いたしますので、演習宙域に指定しても法律上の問題はありません」
「『臨時』演習の期間が、三年以上になるというのはいささか言葉の使い方に問題があるのではないか?」
「掃宙訓練は積めば積むほどよいと、かつて査閲部で学びました」
「帝国軍の脅威がない状況下で、民間航路の軍事統制を行うのは宇宙航海法の航行の自由及び統制条項規約に違反しないのかね?」
「商船の襲撃遭遇率を見る限り、当星域は帝国軍の軍事的圧迫のある国境星域より遥かに危険です。マー
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