第35話 できること
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その対面に俺も座る。
「休みの日に悪いな」
「いえ、命令ですから」
背筋を伸ばし、緊張した面持ちで応えるファイフェルを見て、俺はこれ見よがしに足を組んで背を伸ばし大きく欠伸をする。俺の動きに一瞬唖然とするファイフェルに向けて、俺は軍用ジャケットのポケットからウィスキーのミニチュアボトルを放った。運動神経はさすがにヤンよりいいのか、面前ギリギリでファイフェルはボトルを捕らえる。
「まぁ飲めよ。休みなんだから気にすんな」
「よろしいのでしょうか。その……」
「休みの日に酒を飲んじゃいけないとは同盟軍基本法には書いてない。安心しろ。それとも下戸か?」
実のところ軍施設内での飲酒はご法度なのだが、もう一本のミニチュアボトルを俺は取り出して、一気に中身をあおる。前世ではあまり酒を、特に強いウィスキーをこうやって飲むことなどなかった俺だが、気分の問題だ。俺の動きを呆然として見送ったファイフェルだったが、プハァと俺が酒臭い息を吐くと諦めたように蓋を廻して、ボトルの三分の一くらいをあおり呑んだ。
「あの爺さん。(士官)学校出てないから、小官のこと僻んでるんすかね」
さすがにそのまま司令部で酒盛りするわけにもいかない(某要塞司令部の風紀はいったいどうなっているんだ……)ので、着替えて市街のパブに入ると、先ほどまでの丁寧な口調はどこへやら、本性というか本音をファイフェルは盛大にぶちまける。
「そりゃあドーソン教官みたいな上官じゃないってのは認めます。認めますけどね、頑固で皮肉っぽいところはどうにかなりませんかね」
「そうだなぁ……」
ファイフェルの愚痴も分かる。だがビュコック爺さんが士官学校を卒業したばかりのファイフェルに含むところがあるわけがない。幸いにして俺は査閲部でマクニール少佐や多くの老勇者達と俺は面識を持った。気むずかしくて偏屈な人ばかりだったが、普通に付き合っていて悪意に満ちた皮肉を言われたためしはほとんど無い。ビュコック爺さんに偏屈なところがあるのは原作でもよく知っているが、基本的な精神構造は好々爺のはずだ。ただ単にファイフェルから漂うエリート臭が気に入らない……というだけかも知れない。
「なぁ、ファイフェル。少し肩の力を抜いてみたらどうだ?」
俺は目の据わったファイフェルの肩を揺すって言った。
「確かに爺さんはここの司令官で、歴戦の勇者だ。だからといって必要以上に意識する必要はないと思う」
「小官が片意地を張っているっておっしゃるんれすか?」
「必要以上に緊張しているのは確かさ。なれなれしくする必要もないが、親戚のちょっと偉い爺さんぐらいの距離感でいいと思う」
俺の言葉に、ファイフェルはいぶかしげに俺を見る。その視線は見つめると睨み付けるの中間ぐらいだ。
「……そいつは将官の家系に産ま
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