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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第35話 できること
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宇宙暦七八七年九月から マーロヴィア星域 メスラム星系


 さてマーロヴィア星域管区の海賊討伐作戦をビュコック爺様から任されたといっても、どこから手をつけるべきか。

 司令官権限で、使用可能な戦力は二三九隻の所属艦艇のみ。たったそれだけの戦力で一六個の星系(メスラム星系が一番多いだろうが)に潜む海賊を見つけ出し撃破しなくてはならない。普通に必要とされる艦艇数の桁の数が一つ違う。

過去の情報によればマーロヴィア星域では、広大な管轄宙域に多くの海賊集団が点在している。拠点位置が確認出来ないのだから、個々の規模は大きくないと考えていい。しかしどの組織も軍内部か行政府内、あるいは宇宙港関係者に内通者がいるらしく情報が事前に漏れているようで、出動がたいてい空振りに終わっている。

 軍内部の綱紀粛正に関しては、ビュコックの爺様やモンシャルマン大佐が部隊の掌握と同時に洗い出しを行っている。どこまで出来るかは分からないが、とりあえずは全ての艦が運用できるという仮定に立つしかない。

 海賊を武力で撃破する手段は大まかに二つ。

一つは根拠地を探し出し撃破すること。膨大な時間と正誤判別の手間がかかり、成否は運用する艦艇の数に左右される。だが根拠地となっている鉱山船や小惑星にはワープ機能はなく、発見さえ出来れば撃破は容易だ。根拠地を潰せば、機動戦力はメンテナンスを行う場所を失う。人も宇宙船は手入れが必要であり、結果として海賊を撃破する事が可能となる。もっとも組織が複数の根拠地を有している場合はあまり意味がない。

 もう一つは囮を利用した機動戦力の撃破。より能動的に情報を活用し、囮の艦艇を利用して海賊船をおびき出す戦術だ。手間はかからず少数の戦力でも実施可能だが、事前に作戦情報が漏れれば空振りに終わる。何度も実施したところで成功するとは限らないし、複数の艦艇を有する組織であれば、根絶には至らない。ただ成功すれば、海賊の襲撃手段が直接的に奪われるので、長期にわたってある程度の安全が確保できる。

つまり『家を焼く』か『足を切る』かの違いだ。宇宙戦闘兵器や空間航行能力および空間索敵能力の向上により細かな戦術は変化しているものの、対海賊戦略はもはや『伝統』の域に達しつつある。運用する軍人は組織として知識を蓄え、後継に受け継がれている分、宇宙海賊に対して圧倒的に優位に立っている。ただしそれも戦力が充分揃っていればの話。

 結局のところ、戦力不足という壁がこのマーロヴィア星域では立ちはだかる。ケリムの時には第七一警備艦隊だけで四八五隻。ここは星域管区所属艦艇全部合わせても二三九隻。一六個の星系にある跳躍宙点各所に艦艇を派遣し次元航跡を調査するだけで、手元には一隻も残らない。同時並行で探査する必要性もないが、星域内を移動するだけでも数日の時間
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