暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン ーBind Heartー
黒の剣士と蒼衣の少年
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が現れたのだ。
SAOでの感情表現はオーバー気味に設定されているが、ここまであからさまな羨望の眼差しは初めて見た。本当に光が瞳から飛び出しているようだ。
「すっっっっっげえぇぇぇぇぇぇぇぇ? 本物だ! ナマのキリトさんだ! 最前線にいれば会えるかもとは思ってたけど、まさかホントに会えるなんて!」
何にそこまで興奮しているのか、いきなり大声を張り上げた少年は両手を勢いよくぶんぶん振り回す。先ほどまで命の危機にあっていたとは思えないはしゃぎっぷりだ。
うげっ。これはますます面倒なことになりそうだ……。
「おっ、俺、キリトさんのファンなんです! あのっ、突然ですけど、サインもらってもいいですか!?」
「やるか! ていうか持っとらんわそんなもん!」
素早くオブジェクト化させて差し出された羊皮紙とペンを、俺はぐいっとそいつに押し返す。顔にぶつかって「もぶっ」とうめき声のようなものが聞こえたが、こうなれば、もはやマナーもへったくれもあったもんじゃない。
「だいたい、何なんだよお前は!? こんなところに一人で、≪転移結晶≫持たずに!」
ろくな準備もなしにソロでこの前線のダンジョンに入ることは、誰がどう考えたって自殺行為に等しい。でなければよほどの馬鹿だ。
くしゃくしゃになった羊皮紙を顔から引き剥がしたその馬鹿丸出しの剣士は、再三ガバッと頭を下げた。
「すいません。そういえば名乗るのが遅れていましたね」
興奮の熱で乱れた調子を整えるかのように、こほん、と一度せきをする。そして、ニコニコ顏で名乗ったのだ。
「俺、トーヤっていいます。以後よろしくお願いします」
言ってやりたいことが山ほどあったが、その少年ーートーヤのマイペースさに、そんな気も削がれてしまっていた俺であった。
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