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ソードアート・オンライン ーBind Heartー
黒の剣士と蒼衣の少年
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た。
するとそいつは申し訳なさそうにしていたが、やがておずおずとした手つきでアイテムを受け取る。
早速その小瓶を開くと、「いただきます」と俺に頭を下げ、一気に煽って中身を飲み干した。
これで五分もすればフルに回復できるはずだ。残りの分は、予備としてあげることとしよう。
無論、このポーションもタダではないが、HPを一瞬で全回復させる≪回復結晶≫と比べれば安いものだ。
空になった小瓶と残りのポーションをポーチにしまい込むと、少年プレイヤーはふぅ、と一息ついて再び頭をふかぶかと下げてくる。
「すいません、何から何までお世話になってしまって。ホントにあり……あれ?」
そこまで言いかけた少年剣士は、何かに気づいたように言葉を止めた。
そして、俺の姿を爪先から頭の先までまじまじと眺め始める。さらには、ぐるりと背後に回って背中の剣を見つめたり、装備している漆黒のコートの裾を持ち上げたりしてきたのだ。
流石に何事かと思った俺は、慌ててそいつから飛び退いた。
「な、なんだよいきなり」
他人の格好や装備をじろじろ見るなどのとこは、このSAOにおいてもマナー違反とされる行為だ。特に、女性にそれを行ったら、即刻ハラスメント行為とされて訴えられかねない。そうなれば、すぐに牢屋にぶち込まれることとなる。
それだけでなく、装備品とはこの死と隣り合わせの世界ではプレイヤーの命を左右する大事な生命線なのだ。そんなものを、おいそれと他人に触らせることなど出来ない。
しかし、件(くだん)のプレイヤーはそれを理解したような様子もなく、棒立ちのまま俺に視線を向けているだけだ。
しかし、よく見てみればその手は小刻みに震えていて、大きい瞳もわなわなと揺れていた。一体全体、さっきから何だっていうんだ。
やがて、そいつはきれぎれに言葉を紡ぎはじめた。
「く、黒いロングコートに、盾なしの片手剣装備……。も、もも、もしかして貴方は……」
その落ち着かない指先で俺を差し、さっきまでとは違うトーンの声で、口にした。
「攻略組の≪黒の剣士≫ーーキリトさんですか!?」
「………………」
なんだか、面倒な予感がする。
別にここで「人違いだ」と言ってしまってもいいのだが、この現在最前線となっている七十四層の迷宮区にいることから、すぐに嘘だとバレるのが見に見えた。とりあえず、俺は自分の身分を明かすことにする。
「ああ、そうだ。だからどうした?」
威嚇するように、強めに言い返してみた。これにビビって、少しでも関わらないようになってくれれば、ソロプレイを中心として活動している俺としても助かる。
ーーだが、それはどうやらまったくの逆効果だったらしい。
俺の言葉を聞いた目の前の少年剣士の瞳からはわななきが消え去り、代わりにキラキラとした輝き
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