第三章
[8]前話
「みかんにしてみたら」
「ええ、私達が拾ってね」
「お家で飼ってご飯もお水もあげてるから」
「お礼でなのよ」
まさにそれでというのだ。
「置いてるのよ」
「わざわざ捕まえて」
「それでね」
「家猫にしてるのに」
それでもとだ、千代は言った。二人はみかんが外に出てまたいじめられたり車に撥ねられたりしない様に家猫にして飼っているのだ。
だがそれでもとだ、千代は言った。
「お家の中にいる虫捕まえるのね」
「ええ、それでね」
「わざわざ捕まえて」
「それでね」
そのうえでというのだ。
「私達によ」
「お礼でなのね」
「玄関に置いてるのよ」
「そうなのね」
「そう、みかんにしてみれば」
百は彼の立場になって話した。
「悪気はなくて」
「百パーセントね」
「お礼でね」
それでというのだ。
「あげてるのよ」
「そうなのね」
「そう、それでね」
「そうなのね、けれど正直言って」
千代は自分達の立場から話した。
「それはね」
「有り難迷惑ね」
「それ以外の何でもないわ」
まさにというのだ。
「本当にね」
「私達にとってはそうでもね」
「みかんにとっては違うってことね」
「本当にお礼がしたいのよ」
「そういうことね」
「そう、けれど確かに千代の言う通り有り難迷惑で」
百は今度は自分達の立場から話した。
「蜘蛛や蛾ならいいけれど」
「ゴキブリだったら」
「怖いからね、じゃあね」
「ゴキブリホイホイとか置く?」
「そうしましょう、みかんが捕まえる前にね」
その前に心配の種を取り除いておこうというのだ、そうしてだった。
二人は部屋の中のみかんが絶対に入られない場所にゴキブリホイホイやホウ酸入りの団子も置く様にした、そして。
虫が出来るだけ入らない様に窓をよく閉めて網戸も穴がないかチェックした、虫を見付けたらすぐに出す様にした。
そうして贈りものがない様にした、それで姉妹で話した。
「こうすればいいわね」
「ええ、困る贈りものもなくなるわ」
「じゃあこれからはね」
「そうしてみかんと暮らしていきましょう」
二人でこう話した、そしてだった。
二人で今は自分のご飯を食べているみかんに言った。
「あらためてね」
「これから宜しくね」
「ニャア」
みかんは何故自分に笑顔で言われたかはわかっていなかった、だが。
二人の笑顔に彼も明るい声で応えた、贈りものをしなくなってもみかんは二人に感謝して懐いた。二人にとってはそれで充分だった。
猫の贈りもの 完
2020・5・21
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