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嫌わない人達
第四章

[8]前話
「それでね」
「懐いていってくれてるか」
「そうだよ、あんたの足元にもいるし」
 今のチビがそうなっていてというのだ。
 そうした話をしつつ家族でチビを見ていた、すると実際にだった。
 チビは次第にでも家族に懐いてきて拓哉達が帰って来た時には玄関に迎えに来て拓哉は寝ている時にもだった。
 枕元で一緒に寝ている様になった、それでだ。
 拓哉は学校で木村と洲上に話した。
「寝てたら枕元にいたぜ」
「へえ、そうか」
「随分懐いてくれたんだな」
「家族の傍にいてゴロゴロいってな」
 笑顔で言うのだった。
「本当にな」
「懐いてくれてか」
「そうなってくれたんだな」
「家に来て半年でな」
 それでというのだ。
「そうなってくれたよ」
「それはよかったな」
「最初は部屋の隅っこで震えてるだけだったのにな」
「それでもな」
「今はか」
「そこまでいったか」
「本当にな、けれどな」
 それでもというのだ。
「やっぱり懐いてくれたらな」
「嬉しいか」
「そうなってくれたら」
「本当にな、今じゃチビが家の中心でな」
「チビばかり見てか」
「親父さんもお袋さんも家にいるんだな」
「そうだよ、俺だってな」
 拓哉自身もというのだ。
「そうだしな」
「チビ俺達にも近付いてくれる様になったし」
「随分変わったな」
「やっぱり自分をよくしてくれる人には懐いてくれるな」
「自分を嫌わない人にはな」
「猫もそうなるんだな」
「ああ、俺も父ちゃんも母ちゃんもチビ嫌いじゃないし」
 むしろ大好きだと言っていい、今では家族の一員どころか中心とさえ思っている。
「チビもそう思うな」
「俺達もチビ好きだしな」
「だったらな」
「猫も懐くんだよ、自分を好きな人達にはな」 
 笑顔で言った、そしてだった。
 拓哉が学校とアルバイトを終えて家に帰ると玄関でチビがちょこんと座って待っていた、拓哉はその彼に笑顔で挨拶をした。
「チビ、帰ったぜ」
「ニャア」
 チビも嬉しそうに鳴いて応えた、そうして彼の足元に顔を摺り寄せてきた。それは自分を好きでいてくれている人への仕草に他ならなかった。


嫌わない人達   完


                   2020・5・21
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