第三章
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「そうなっていただろうな」
「それでか」
「懐かないか」
「仕方ねえな」
部屋の隅でじっとしている猫を見て言う。
「少しずつな」
「懐いてくれるのを待つか」
「そうするんだな」
「名前も名付けたしな、チビな」
これが猫の名前だというのだ。
「ちなみに雌だよ」
「へえ、雌か」
「女の子なんだな」
「そうだよ、トイレはちゃんとしているし爪とぎも言われたとこでやるしな」
それでというのだ。
「後は懐いてくれるだけだな」
「それは気長にか」
「待つか」
「そうするな」
こう言ってだ、チビを見つつ自分の部屋でだべっていた。とにかくチビは中々懐かなかったがそれでもだった。
次第に家族そして拓哉の友人達と距離を縮めていった、それでだ。
拓哉は夕食の時自分の傍に来ていたチビを見て一緒に食べている両親に言った。
「こいつ俺のとこに来たよ」
「そうか、よかったな」
「そっちに来てくれたのね」
「ああ、やっとな」
笑顔で言うのだった。
「そうなってくれたな」
「うちに来て二ヶ月経ったな」
「それでなのね」
「ああ、けれどな」
それでというのだ。
「やっとだな」
「あれだな、チビもわかってきたんだよ」
父はおかずのコロッケ、ソースをたっぷりかけてご飯がより進む様にしたそれを食べつつさらに言った。
「自分を嫌わない、相手にしてくれる人達がな」
「それでか」
「今お前の傍にいるんだ」
「そういえばね」
母も言ってきた。
「母ちゃんが家事をしていても」
「傍に来たりか」
「最近してるよ」
「そうなんだな」
「だからね」
それでというのだ。
「少しずつでもね」
「今父ちゃんが言った通りにか」
「少しずつでもね」
まさにというのだ。
「懐いてくれていってるんだよ」
「俺達チビを殴ったりしないしな」
「だからね」
そうしたことをしているからというのだ。
「だからね」
「それでか」
「そう、それでね」
それでというのだ。
「ここはね」
「少しずつか」
「チビが近付いて来るから」
「待っていればいいか」
「だって家族はチビをいじめたりしないよ」
だからだというのだ。
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