ソードアート・オンライン〜剣の世界〜
3章 穏やかな日々
32話 ある女の子
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昼過ぎ、リアとツカサはその日の仕事を終え、昼食を取りに家に一度帰っていた。
ちなみに今日のメニューはナポリタンにコーンスープだ。実はこの間、夜な夜な最前線でレベル上げをしていた時にドロップしたアイテムの解析を行ったところ、トマト独特のあの酸味に似ているらしいということが分かった。ということで、早速実験した、ということである。
ゆっくりと、かつ思わずハッとくぎ付けになってしまうほど上品な所作でフォークに赤い麺を巻き付け、ツカサはそれを口に入れる。
じっくりと目を瞑って咀嚼するツカサ。
それを見守るリア。
まるでこれからボス戦を控えたかのような空気の張り詰め方であるが、お忘れなきよう、片方はパスタを食べ、片方はそれを見守るという、ただの食事風景である。
静かに、ややエロティックに喉仏を上下させてパスタを飲み込んだツカサはゆっくりと目を開けた。
「ん、美味い」
ツカサの言葉によって部屋の緊張感は一気に解け、リアはへにゃり、と表情筋を崩す。なんだかんだ言って、ツカサに料理を褒められるときが彼女にとって一番嬉しい時なのである。
「やった!やっぱりこれはトマトだよね!?」
「ああ、ほとんど現実と一緒だ」
「ようやく見つかってよかった、ケチャップだけ妙に物足りなかったから。でも、最前線でドロップするアイテムだから、まだまだ商業化は難しそうだね」
「だな。90層あたりまで突入してしまえば当たり前になるかもしれないけどな」
なんて会話をしつつ、平らげ、食後のコーヒーを啜る2人。どうやらオールラウンダーとしてこの世界をより良くするという思考は、こうして最前線を離れている間も忘れていないようだった。
「…そういえばさ」
「ん?」
コーヒーカップを口に運ぶ手前でリアが口を開き、ツカサは呼んでいた新聞から目を上げる。
「軍のこと、どうしようか」
「…そうだな」
最近の悩みとなっている軍…アインクラッド解放軍、と名前を変えたその組織は、いまでは手綱の切れた暴れ馬と化している。秩序や統制が全くなく、ただの有害な組織になれ果ててしまった。
リアとツカサが支援している、あの教会も軍の支配地域のため、考えなくてはいけない大きな問題の一つだった。
教会の拠点を上の層にすることも視野には入れているものの、それはただ単なる一時的な凌ぎにしかならないし、始まりの街に住まう他のプレイヤーを見捨てることにもなる。それは自分たちの目的上宜しくないことなのだ。どうせなら、軍のほうを改革したい。
だが、そう簡単なことでもないことは、リアとツカサも重々承知だった。
組織というのは厄介だということは、身をもって知っている。改革には膨大な時間と労力が必要とされるのだ
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