第22節「この拳も、命も……」
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……」
照れ臭そうにはにかむ未来。
階段を下りた響が振り返って感謝しようとした、その時……。
激しいブレーキ音と共に、三台の黒い乗用車が目の前を走り抜けていく。
乗っているのは、二課の黒服職員……情報部の職員だ。
「ほわッ!?」
「──ッ!」
車が角を曲がった次の瞬間、ブレーキ音、クラクションと共に爆発音が鳴り響き、煙と炎が上がった。
「今のッ!」
「行くぞッ!」
響と翔を先頭に、10人は爆発のあった場所へと走る。
そこに広がっていたのは、破壊され、ひっくり返った乗用車と炭素の山。
そして……。
「……ひ、ひひひ……誰が追いかけてきたって……こいつを渡すわけには……」
「ウェル……博士……ッ!」
乱れた髪に無精髭、精神が崩壊してはいまいかと心配になるような笑い声。
昨夜よりも更に狂気を感じさせる雰囲気を纏ったウェル博士であった。
自分の名を呼んだ者の顔を見るなり、博士の表情は一瞬にして恐怖に歪んだ。
「な、なんで、お前らがここにいいいッ!? ひッ、ひいいいいッ!」
ウェル博士が向けた杖の動きに合わせ、2体のクロールノイズがこちらへ飛びかかる。
次の瞬間、響と翔は友人たちの前へと素早く躍り出て、鞄を投げ捨てるとノイズへ向かって走り出した。
「──Balwisyall Nescell gungnir troぉぉぉぉぉぉンッ!」
「──Toryufrce Ikuyumiya haiya troォォォォォォンッ!」
聖詠と共に、二人はそれぞれノイズに正拳突きと飛び蹴りを放つ。
その拳とつま先は、生身でノイズに触れていた。
「──響ッ!?」
「翔……ッ!?」
未来や恭一郎は、その光景に度肝を抜かれる。
特にウェル博士は、その目を瞠目して驚愕を露わにしていた。
「人の身で、ノイズに触れて──」
二人がノイズに触れた個所から、ギアが展開されていく。
装着が終わり、響のマフラーがたなびくと共に、2体のノイズは粉砕された。
「「おおおおおッ!」」
「ひいいいいーッ!?」
ノイズが砕け、余波で発生した風圧に打たれながら、ウェル博士は悲鳴を上げる。
その瞬間に実感したのだろう。
二人は拳を震わせ、歯を食いしばりながら宣言する。
「この拳も、命もッ──ッ!」
「この身体も、魂までも──ッ!」
「「シンフォギアだッ!」」
我こそはヒトでなく、“シンフォギア”である……と。
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