第3楽章〜迫る生命のカウントダウン〜
第21節「奇跡──それは残酷な軌跡」
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響は──?」
「……遠からず、死に至るだろう」
弦十郎からもたらされた最悪の答えに、翼の全身が震えた。
「──二人の、死……死ぬ……? 馬鹿な……」
震える声でやっと、その言葉を絞り出す。
「そうでなくても、これ以上融合状態が進行してしまうと、それは果たして、人として生きていると言えるのか……」
弦十郎もまた、辛さを抑えているのが顔を見て察せられる。
甥っ子と一番弟子が死ぬかもしれないのだ。無理もない。
「皮肉なことだが、先の暴走時に観測されたデータによって、我々では知り得なかった危険が明るみに出たというわけだ」
「……壊れる二人……壊れた月……」
「F.I.S.は、月の落下に伴う世界の救済などと立派な題目を掲げてはいるが、その実、ノイズを操り人命を損なうような輩だ。このまま放っておくわけにはいくまい……。だが、月の軌道に関する情報さえ掴めない現在、翔と響くんを欠いた状態で、我々はどこまで対抗できるのか……」
窓から覗く、欠けた月。
いつ落下するとも知れぬそれを見上げながら、弦十郎は拳を握り締める。
「……それでも、弟と立花をこれ以上戦わせるわけにはいきませんッ! ──かかる危難は、全て防人の剣で払ってみせますッ!」
月を見上げながら、翼は毅然とそう返した。
だが……その心には、不安が影を落としていた。
(でも……本当に、私は二人を守れるの……? 立花や翔がネフィリムに喰われる瞬間にも、私は何もできなかった……。実の弟も、奏が命懸けで守ったあの子も守れなかった私が……本当に、これから先の危難に立ち向かえるのだろうか……)
翼の脳裏に浮かぶ、奏の背中。
いつでも頼もしくて、まっすぐで、強かったその背中を……翼は今、求めていた。
(あの夏の日、奏が死なずに済んだ並行世界があると知った……。別の世界には、今でも奏と二人、肩を並べて戦う私がいることも。……今の叔父様の話さえなければ、いつか翔の生弓矢で──)
翼は慌てて首をもたげかけたその願望を否定する。
(いや、そんな事、あってはならない! あれは奇蹟なのだッ! 死人が蘇るなど、あってはならない……!)
了子の時は、生弓矢がエクスドライブモードだったことに加え、翔の融合症例もまた、奇蹟を引き起こした要因の一つだろう。
だが、分かっていたとしても……今の彼女は、願わずにはいられないかった。
(……でも……やっぱり──奏がいたら、どれだけ頼もしい事だろうか……)
別れも言えずに喪ってしまった戦友と、再び言葉を交わすことを……。
ff
「はひぃ……はぁ、はぁ……ッ!」
翌朝、カディンギル址地。
一晩中逃げ回っていたウェル博士は、息も絶え絶えになりながら歩いていた。
疲
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