第3楽章〜迫る生命のカウントダウン〜
第21節「奇跡──それは残酷な軌跡」
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ーツに落ちる。
「……かさぶた……?」
それが、彼女の身体に起きていた変化の証だと、彼女はまだ知らない。
それはまた、想い人たる彼にも言えることで……
ff
「月の落下です!ルナアタックに関する事案です!」
「シエルジェ自治領への照会をお願いします!」
「だから、アポロ計画そのものまでが──」
「城南大学の久住教授に協力を取り付けました!」
「──権限は……ペンタゴン!?」
「誰だって!? どう考えてたっておかしいじゃないですかッ!?」
「『帰ってきたライカ犬』と名乗る匿名有志からの内部告発を受信。発信の出処は……キューバ、ソビエト連邦宇宙局ですって!?」
発令所内は喧騒で満ちていた。
各国政府への問い合わせ、並びに国内の有識者達に協力を仰いで、ウェル博士の語った月の落下が真実かどうかを解明するべく、職員らが奔走しているのだ。
弦十郎は各国首脳に回線を繋ぎ、真相究明に乗り出すよう呼び掛けていた。
『米国の協力を仰ぐべきではないか?』
「米国からの情報の信頼性が低い今、それは考えられませんッ! 状況は一刻を争います。まずは月軌道の算出をすることが先決ですッ!」
『独断は困ると言っているだろう』
『まずは関係省庁に根回しをしてから、それから本題に入っても遅くはない』
何度呼び掛けても、首脳達は中々首を縦に振らない。
頭が固いだけなのか、それともウェル博士の言う通り、シラを切っているだけなのか。
どちらにせよ、他国政府からの協力は絶望的であった。
会議の後、弦十郎は艦内の空き部屋に翼を呼び出すと、医療班から受け取ったシャーレを渡した。
「……これは?」
「メディカルチェックの際に採取された、翔と響くんの体組織の一部だ」
シャーレにはそれぞれ、琥珀色の結晶を含む黒い鉱物のようなもの、そして色は灰色だが同様の特徴を持つ物体が乗せられていた。
更に弦十郎は、二人のレントゲン写真を窓からの夜景にかざして見せた。
そこには心臓付近から全身へ、まるで癌細胞のように広く侵食した、生弓矢とガングニールの欠片があった。
「胸の聖遺物がッ!?」
「身に纏うシンフォギアとして、エネルギー化と再構成を繰り返してきた結果、体内の侵食深度が進んだのだ」
「生体と聖遺物がひとつに融け合って……」
「適合者を超越した、二人の爆発的な力の源だ」
それぞれの聖遺物より発せられる膨大なエネルギーは、二人の代謝機能をも爆発的に加速させ、失った左腕や右脚を再生させた。
だがその一方、その離れ業は代償が大きく、更なる融合深度の促進を招くことになってしまったのだ。
翼はこのレントゲン結果に不穏を覚え、不吉な予感と共に弦十郎の顔を見る。
「この融合が二人に与える影
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