第3楽章〜迫る生命のカウントダウン〜
第21節「奇跡──それは残酷な軌跡」
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の身辺調査なら任せてください、とは言いましたが……。翔くん、いつの間にそんな子が?』
『別に、そんなんじゃありません。ただ、あの子があの後どうなったのかが、気になってしまって……』
転校した後、僕は緒川さんに彼女の調査を依頼した。
緒川さんは僕の顔を見ると、何も言わずに承諾してくれた。
数日して、緒川さんが持ってきた報告書を見て……僕は思わずそれを、皴になるくらい強く握った。
『逃げ遅れて……姉さんのすぐ近くに?』
『ええ……。心臓付近に達する重症でしたが、奇跡的に助かったようです。リハビリにも積極的だったと、担当医だった人物から聞いています』
つまり、だ。
頑張ってリハビリに励み、元気になって帰ってこれば、きっと家族が喜んでくれる。
きっと元の生活で、また笑い合えると……。そう信じて、彼女はここまでやってきたのだろう。
なのにその夢は、儚くも無残に打ち砕かれてしまった……。
周囲からの迫害に父親の失踪……よもやここまでとは……。
彼女でこれなら、他の被災者達は一体……どんな責め苦を受け続けているんだ……。
『翔くん……』
『ありがとうございます、緒川さん……。ようやく、自分の為すべきが何であるかが、見えました』
だから……この時、“俺”は決めたんだ。
強くならねば、と。
弱い自分に別れを告げて、理不尽に抗う心の強さを磨かなくては……と。
『僕は……いや、俺は……姉さんの弟として、父さんの息子として恥じない漢になるッ! 弱きを護る防人に……隠れて泣いてたあの子に、この手を差し伸ばせる強い漢にッ!!』
これが俺の原点……。
僕が俺になることを決めた日で、一歩を踏み出す勇気を胸に誓った瞬間の──。
ff
「ん…………」
目を覚ました響は、医務室の天井を見上げる。
自分に何があったのかは、何となく覚えている。
ウェル博士の言葉に動揺して、ネフィリムが……そして──。
(わたしのやってることって、本当に正しいのかな? わたしが頑張っても、誰かを傷つけて、悲しませることしかできないのかな……?)
ふと、顔を横に向けると、そこには見慣れた愛しい横顔が眠っている。
暴走して、頭の中が真っ黒に塗り潰されても分かる、大好きな人。
見つめていたら、彼は口を開いて……小さな寝言を言っていた。
「……ぜったい……まもるから……ひびき……」
「ッ! ……ありがと、翔くん」
体を起こすと、響は寝ている翔の手を優しく、そっと握った。
「え──?」
そこで、響は胸に違和感を感じる。
患者衣の胸元を開くと、胸の傷跡の真ん中に、黒い塊がくっついていた。
なんだろうか、と疑問に思いながら触れると、それはポロっと取れてシ
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