第3楽章〜迫る生命のカウントダウン〜
第21節「奇跡──それは残酷な軌跡」
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僕は絶句した。
『人殺し』、『金どろぼう』、『お前だけ助かった』、『出ていけ』、『いい気になるな!』、『死ねばよかったのに』、『人殺し』、『人殺し』、『人殺し』……ああああああああッ!!
思い出すだけで吐き気がするッ! なのにどうして、その光景は僕の記憶に焼き付いて離れない……ッ!
人様の家にこんな張り紙を張り付けるなんて……。
ノイズへの不安、マスコミによる煽動、鬱憤晴らしに逆恨みッ!
被災した本人だけに飽き足らず、両親、祖父母、兄弟姉妹……親しい人達まで迫害し、村八分にしては叩いてのめすッ!
どうして人間は、こんなにも醜くなれるッ!
周りに流され、正しさに酔い、偽りの正義を振りかざしては何の罪もない人々を、まるで中世の魔女狩りにも等しいやり口で追い詰めるッ!
主体性を見失い、問題の正体を見失い、残る捻じれた個人的感情でただ弱きを踏み躙るッ!
何故、隣人の生還を喜ばないッ!
何故、自らの不幸を他人にまで押し付けるッ!
悪いのはノイズだろ? もし被災者と同じ立場だったら、同じ事できんのかよ!
マスコミもマスコミだ!
姉さんを悲劇のヒロインとして、奏さんの訃報を大々的に報じる一方で、被災者に責任を問うような真似ばっかりしやがって……ッ!
結局、事件の真相や被災者の事情を伝えて相互理解へとつなげるより、薪を投下し燃料を増やして、自分達は儲けられりゃそれで良いって事かよッ!
これが人間のやる事かよ……。
こんなものが……風鳴が代々護ってきたものなのかよ!!
……渦巻く感情に身を焦がしながら、僕は鞄の帯を握る。
その時、三人ほどの学生が、彼女の家の窓に石を投げた。
『人殺しーッ! 人殺しーッ!』
『ハハハハ』
割れた窓の向こうから、少女の母親が顔を出す。
『わッ! 逃げろー、殺されるぞーッ!』
途端に蜘蛛の子を散らすように逃げ出す学生達。
制服や体格からして高校生、おそらく帰宅部だろう。
思わず彼女の家の前に立ち、割れた窓からこっそりと中を覗く。
そこには、母親と祖母に抱かれ、泣きじゃくる彼女の姿があった。
『大丈夫だから……。あなたが生きてくれるだけで、お母さんも、おばあちゃんも嬉しいんだから……ね』
『……わああああああ……ッ!』
いつも、唯一傍にいてくれる親友の前では微笑んでいる彼女。
明るく、元気で、あまり絡んでいなかった当時の僕でも、彼女が優しい子なのは知っていた。
でも……そんな彼女も、家では泣いていた。
大きな声で、母親の腕に抱かれながら、ずっと……。
助けたかった。手を伸ばしてあげたかった。
だけど……彼女に声をかけた日から間もなく、俺の転校が決まってしまった。
『気になる人
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