「代わり」の意味
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だった気がする。
そして俺は子供の頃から冒険心に負けない位運命と言うのを信じていた。ことさら恋愛においては伴侶と言う言葉を知らないまでも「この世界のどこかに俺のためだけのお姫様がいるんだ!」と言うそれはそれは恥ずかしいことを公言していたらしい。
そんなやんちゃ坊主でロマンチストな俺といかにも箱入りのお嬢様だった当事の明日奈が仲良くなれたのは付き合いが他より長かったのと家が隣だったからに他ならない。それほど密接な関係ではなかった。精々教科書を貸し合ったりするだけの仲だった。
だが、小学三年生の夏休み。俺はあの男と出会ってしまった。須郷伸之。
俺にとってこの男の第一印象は…自分に反吐が出ると思うが人の良い好青年、そんな言い方はその当時習ったばかりで、ああ、こんな奴が好青年なのかと思った。俺が須郷と初めて会ったのは結城家の前だった。
「やあ、君が木戸琢磨君か。初めまして、僕は須郷伸之と言う。」
やんちゃ坊主だったが躾はされていた俺は
「初めまして須郷さん、木戸琢磨といいます。」
あの男に…営業用とは言え笑いかけた。信じられない、もしタイムマシンができたらこの瞬間に戻って子供の自分に囁いてやろう。「この男は最低な人なんだよ」と。
その後少しばかり話した…もうその事は覚えていない。思い出したくも無い。
その後俺は明日奈に用事が…夏休みの宿題を見せてもらおうと思っていたのでその足で上がった。
お邪魔しますも言わないで部屋に入って俺が見たのは…
「どうしたんだよ!?」
泣いている明日奈だった。
「オイ、どうした。友達と喧嘩でもしたのか?」
泣いたまま、何も口にしなかった。ただ首を振った。
宿題を見せてもらおうという考えは吹っ飛んでその前に思わず正座した。
「泣くなよ…ほら、ハンカチ。」
「……ありがとう…」
それも涙の中からやっと声を絞り出した…そんな感じで、人が泣いているのを見るのが大嫌いだった当事の俺は
「泣くなよ!何があったのか、俺に言え!」
思わず明日奈を怒鳴りつけていた。それが逆効果だと知っている訳もないガキだった。
その時俺は始めて恐怖と言う感情を目にした。俺から後ずさったアイツの顔にあったのは恐怖。お化けが怖いって言うのとはまるで違う顔だった。
「やめて…来ないで…」
俺は口をしばらくパクパクさせた後「ゴメン」と謝ったらしい。
それから俺は性に合わない我慢をした。明日奈を怖がらせたのだから、その罰だと思って待った。
一時間だったか、二時間だったか、或いは三分だったかも知れない。俺にとっては永遠に近い長い時間待った後明日奈はポツリと呟いた。
「すごうさんが…」
聞いて直ぐには須郷と変換できなかった。
「私に、喚き散らして…顔を近づけて…」
人の悪意になんか触れたことのない…触れるべきですらないこの
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