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ソードアート・オンライン ーBind Heartー
クラヤミノリズム
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午前九時。
昨日決めた通りの時間に、俺は七十四層の主街区ゲート広場でアスナを待っていた。トーヤはというと、誰よりも早く待ち合わせ場所に来ていたようで今から十五分ほど前にここへ到着した俺と鉢合わせたのだが、買い忘れたアイテムがあると言って商業区へと掛けて行ってしまったのだ。
だがしかしーー。
「来ない……」
時刻はすでに九時十分。勤勉な攻略組が次々とゲートから現れ、迷宮区目指して歩いていく。ああ何か携帯ゲーム端末でもあればなあ、などと考えている自分に気づきげんなりする。
もう帰って寝ちゃおうかなぁ……とそこまで思考が後ろ向きになった時、転移門内部に何度目かの青いテレポート光が発生した。さして期待もせずゲートに目をやる。と、その瞬間ーー。
「きゃああああ! よ、避けてーー!」
「うわああああ!?」
地上から一メートルはあろうかという空中に人影が実体化しーーそのまま宙を俺に向かって吹っ飛んできた。
「な……な……!?」
避ける、もしくは受け止める間もなく、その人物は俺に思い切り衝突し、二人は派手に地面に転がった。石畳でしたたか後頭部を打つ。街中でなければHPバーが何ドットか削れただろう。
混濁した意識の中、俺は自分の上に乗ったままのトンマの体を排除すべく右手を伸ばし、ぐっと掴んだ。
「……?」
すると、俺の手に、何やら好ましい不思議な感触が伝わってきた。柔らかく弾力に富んだそれの正体を探るべく、二度、三度と力を込める。
「や、やーーーーっ!!」
突然耳元で大音量の悲鳴が上がり、俺の後頭部は再び激しく地面に叩きつけられた。同時に体の上から重さが消滅する。
身を起こすと、目の前にペタリと座り込んだ女性プレイヤーーー待ち人である、アスナがいた。どうしたことか、曰く言いがたい殺気のこもった眼で俺を睨んでいる。その両腕は胸の前でかたく交差されーー……胸……?
突如、俺は先ほど自分の右手が掴んだ物の正体を直下した。
「……あ」
「え……?」
やり場のない右手をどうしようかと混乱した思考の中で迷走しかけたとき、俺に向けられていたアスナの細剣の一撃のごとき視線が、わずかに横にそらされた。
俺もその目線を追ってみると、その先には、陽光でうっすら茶色い光を反射する髪色のアホ毛と、ロングマフラーが特徴的な少年が、俺の後方で突っ立っていた。その手に持っているのは、紙袋に包まれたこの階層の主街区にある露店で売られているコロッケのような食べ物だ。
中身が赤色なので明らかにジャガイモのものではないだろうが、そのジャンクな味付けがなかなかにうまい。
俺たちふたりがぽかーんとしているその間、少年は包みの中の揚げ物にガツガツと急いで食いついていく。やがてすべて咀嚼
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