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戦国異伝供書
第八十七話 元服と初陣その十二

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「兵を送ってくるやも知れませぬ」
「あの家は用心すべきか」
「大内家よりも」
「そういえばあの家の本城であるが」
「月山富田城ですな」
「随分堅城と聞くな」
「山城ですが」
 元就はその月山富田城についても話した。
「ただの山城ではなく」
「山全体、しかも堅固な山を城にしたな」
「そうした城なので」
「おいそれとは攻め落とせぬか」
「左様です、ですから」
「ただ野心が大きいだけでなく」
 それに加えてというのだ。
「守りも堅いので」
「強い相手か」
「あの家と戦うとなると」
「随分と骨が折れるか」
「そうかと」
「だから尼子家につくこともか」
「考えるべきかと、当家としては」
 こう兄に話した。
「そう考えております」
「成程な、ではそのことはな」
「はい、これからのことですな」
「お主に任せる、それとお主の初陣じゃが」
 興元は元就に彼のそれのことも話した。
「今はな」
「まだ、ですか」
「戦が起こっておらぬ、しかし戦になれば」
「その時は」
「すぐに出てもらう」
 その初陣にというのだ。
「そして戦ってもらうぞ、お主は兵法の書もよく読んでおるな」
「政の書に加えて」
 実際にとだ、元就は答えた。彼はそれこそ文字を覚えてからすぐに書を読みはじめた。まだ本来は元服もまだという歳だが多くの書を読んできているのだ。
 それでだ、元就自身もこう答えたのだ。
「そちらも」
「左様であるな、ではな」
「戦においてもですか」
「期待しておる」
 こう弟に述べた。
「是非共な」
「毛利家の為に戦いまする」
「頼むぞ、若しや」
「若しやとは」
「当家はお主によってな」
 元就、彼によってというのだ。
「雄飛するやもな」
「そう言って頂けますか」
「お主の才が役立ってな」
「それでは」
「わしが若し世を去っても頼む」 
 弟にこうも言った。
「幸松丸のことだけでなくな」
「毛利家もですな」
「お主に任せる」
「わかり申した、それでは」
「戦国の世、下剋上であるが」
「まさに力あってですな」
「お主がいれば毛利家はやっていけよう、例えるなら」
 興元はふと思い出した名があった、その名はというと。
「伊豆と相模のな」
「北条家の」
「早雲殿の様にな」
「あの御仁の話はそれがしも聞いていますが」
「恐るべき方じゃな」
「ただ戦に強いだけでなく」
 元就も彼について述べた。
「政もお見事で」
「謀もじゃな」
「そちらもです」
「そして一代であそこまでなられたな」
「伊豆に相模を手に入れられました」
「山内、扇谷の両上杉家を圧倒してな」
「全く以て見事な方です」
 元就も早雲については確かな声で讃えるばかりだった。
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