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戦国異伝供書
第八十七話 元服と初陣その七

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 松壽丸は実際に義母と主な家臣達と共に吉田郡山城に入った、そこで。
 杉大方は松壽丸にこう言った。
「立派ですね」
「といいますと」
「貴方の態度がです」
 その松壽丸を見ての言葉だった。
「実に」
「そう言って頂けますか」
「はい、父上が亡くなられましたが」
「悲しいです、実は」
「ですがその悲しさに耐えられていて」
 そしてというのだ。
「毅然としておられますね」
「そのことがですか」
「立派です」
 こう言うのだった。
「今の貴方は」
「そう言って頂けますか」
「私は誇りに思います」
「義母上にとって」
「血はつながっていませんが」
 それでもというのだ。
「貴方という息子を持てて」
「有り難きお言葉」
 松壽丸は義母のその言葉を受けて述べた。
「その言葉心に刻んでおきます」
「そう言って頂けますか」
「心より。では」
「それではですね」
「はい、そして」 
 そのうえでというのだ。
「これからの励みにさせて頂きます」
「そうして下さいますか」
「それがしも義母上がおられてよかったです」
「私がですか」
「実に。では」
「はい、まずは父上の葬儀を行い」
「そうしてですね」
「どうやらです」
 杉大方は今は自分に用意された部屋に控えている松壽丸にさらに話した、今は二人で共にいるのだ。
「貴方の元服もです」
「それもですね」
「行われることになります」
「そうですか、私も」
「貴方の諱は何になるか」
 このこともというのだ。
「楽しみにしています」
「そうですか」
「遂にです」
「元服ですね」
「その時が来たことも」
 それもというのだ。
「私は嬉しく思います」
「元服のことも」
「十で元服はいささか早いと言えますが」
「二年か三年は」
「はい、ですが」
「それでもですね」
「元服出来たことは」
 喜び、それに満ちた言葉で言うのだった。
「そのこと自体がです」
「左様ですか」
「私にとってはこのこともです」
「嬉しいことですか」
「子供は何時どうなるかわかりません」
 すぐに死ぬ、だからだというのだ。
「ですから」
「そうですね、子供はです」
「何かあるとですね」
「すぐに死んでしまいます」
「元服まで至ることも難しい」
「その元服まで至ったことがどれだけ嬉しいか」
 こう松壽丸に言うのだった。
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