暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのは〜無限の可能性〜
第8章:拓かれる可能性
第244話「譲れない想い」
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どん増えていく。
 最早、言葉の節々が聞き取れなくなる程だ。
 それでも、エアは言葉を残そうとする。

『……でも、貴方がマスターで、本当に良かっ―――』





 ―――そして、“ブツリ”と、エアの声は途切れた。







「ッ……!!!」

 何が起きたのか、帝は本能的に一瞬理解を拒んだ。
 だが、理解出来てしまう。
 今この時、エアという“帝のデバイス”は、本当に喪われたのだ。

「――――――」

 直後に渡来したのは、言い表しようのない“熱い想い”だった。

「ァ……ァァ……!」

 動かないはずの四肢に、力が籠る。
 燻っていたはずの無力感が、引いていく。
 血の気が引くような、サッと冷たい感覚が通り過ぎ……







「――――――――――――ッッ!!!!」

 ……声にならない雄叫びと共に、煮えたぎるマグマの如き感情を爆発させた。

「なんだ……!?」

「ぇ………?」

 その“想い”による衝撃は、優奈と他の神々にも届く。
 何事かと、一部の神と優奈が目を向ける。

「帝……?」

 そこには、倒れていたはずの帝が立っていた。
 傷は消えているが、魔力も能力も、以前の容姿すらも奪われたままだ。
 ……だというのに。

「(……何が、起きたの……!?)」

 その体から放たれる途轍もない“何か”が、優奈を圧倒する。

「(一体、何をきっかけにすれば、そこまでの“可能性”を……!?)」

 だが、優奈にとってそれは感じた事のあるエネルギーだ。
 生命の持つ可能性そのもののエネルギーが、帝から放たれていた。

「今更、立ち上がった所で!」

 その時、一人の“天使”が帝に襲い掛かる。
 理力の剣が振りかぶられる。……が、帝は避けようともしない。

「なっ……!?」

「―――邪魔だ」

 その光景に、一部の者は絶句した。
 “天使”の攻撃が、帝をすり抜けたのだ。
 そして、帝はそのまま拳を“天使”に叩き込んだ。

「何が……!?」

 ここで、ようやく神々も帝を警戒する。
 優奈の包囲はそのままに、手の空いた神と“天使”で帝を囲む。

「……俺は、さ……主人公とかみたいに、誰かの犠牲とか、ピンチとかで都合よくパワーアップ出来る訳じゃねぇんだよ……」

 俯いたまま、帝はそう呟く。
 足元には、水滴が落ちており、泣いている事が伺えた。

「でもな……でもなぁ……!俺だって、大切な奴が死ぬのは、悲しいし、許せねぇんだよ……!俺にだって、譲れない想いってのは、あるんだよ……!!」

 顔を上げる。
 帝は、怒りと悲しみの混じった、複雑な形相をしていた。


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