第8章:拓かれる可能性
第244話「譲れない想い」
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「………」
それでも、神界ならば戦う事は出来る。
それなのに立ち上がれないのは、偏に“無力”を見せつけられたからだろう。
自分ではどうしようもない。絶対に勝てないと、帝は思い知らされた。
心が折れてしまえば、もう立ち上がる事は出来ない。
「俺、は……俺はぁ……!」
“どうしてこんなにも弱いのか”、“どうしてここで倒れてるだけなのか”。
後悔、怒り、様々な感情が渦巻き、それを塗り潰すように無力感に覆われる。
『―――マス、ター……』
「っ………!」
その時、微かに脳内に声が響く。
いつも、よく聞いた声……エアの声だ。
「『エア……!エアなのか……!?』」
『……はい。ですが、間もなく今の私は新たな“私”に書き換えられます……』
「『ッ……』」
エアの言葉が、どういう事を示しているかは、帝にも理解出来た。
要は、エアは僅かに残った自我だけで帝に語りかけてきたのだ。
『……最後……最期に、マスターに伝えたい事が……』
「『エア……?』」
念話にノイズが増していく。
本来ならば、もう本来のエアは自我を書き換えられているはず。
それなのに、最後の力を振り絞り、帝に自分の“気持ち”を“想い”を伝える。
『―――好きです。愛しています、マスター』
「『……ぇ……?』」
『突然こんな事を言われても、戸惑うとは思います。……でも、本当です。私は、貴方の事がマスターとしてではなく、一人の異性として、愛しています』
今まで、全くそんな素振りを見せなかった。
だからこそ帝は困惑する。
なぜ、今なのか。なぜ、自分なのか……と。
「『なん、で……』」
『もう、今しか伝えられないからです。……私は、もうすぐ私ではなくなります。人格も、記録も、何もかも新たな“私”に取って代わられるでしょう。……でも、この“想い”だけは、絶対に譲れませんから……!』
「『ッ……!?』」
それは、今まで落ち着いた口調のエアから感じた程のない熱の籠った発言だった。
窮地に陥った際の焦った時ですら、これほど熱の込められた事はない。
『……貴方にも、譲れない“想い”があるはずです。……だから……だから、どうか、私よりも、彼女の事、を……』
「『エ、ア……!』」
AIでしかないはずの、エアの声が嗚咽混じりになる。
もし人型の形態であれば、間違いなく涙を流していただろう。
そう、いくらデバイスだと、道具だと言われようと、エアの想いは本物なのだ。
「『でも、俺には、お前がいないと……!』」
『……本当に、世話の焼けるマスターです……』
ノイズがどん
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