第20節「血飛沫の小夜曲(後編)」
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ル博士しかいない。背に腹は代えられないのだ。
切歌は調を連れ、戦場から離脱したドクターを連れ帰りに向かった。
(すべては、私が“フィーネ”を背負いきれていないからだ……)
二人が退室するのを見送ったマリアは俯く。
役割を全うできていない、自らの甘さを責めながら……。
ff
「……〜〜……〜〜ッ!」
荒い息を吐きながら、ネフィリムを斃した二匹が、今度はウェル博士へとその目を向ける。
「ひいいいいいぃぃぃぃッ!」
腰を抜かし、後退るウェル博士。
響と翔は唸り声と共に飛びかかろうとするが……身体の自由を取り戻した翼達は、その両腕を背後から掴み、抑え込んだ。
「よせ、立花ッ! もういいんだッ!」
「お前、黒いの似合わないんだよッ!」
「翔、ダメだッ! こんなの、お前らしくもないッ!」
「ひゃッ、ひぃぃッ、ひッ、ひいいいいッ!」
羽交い絞めにされる目の前で、憎き仇が逃げていく。
翼とクリスの二人掛かりで抑えている響はともかく、翔を一人で羽交い絞めにしている純は、体勢を崩しかけていた。
「行かせねぇッ! お前を、人殺しなんかにして……たまるかぁぁぁぁぁッ!」
「“エンキドゥ”ッ!」
声の直後、翔の身体を黒鉄の鎖が縛り付ける。
「ッ! お前……?」
純が振り返ると、そこにはツェルトが立っていた。
「借りっぱなしじゃ気が済まないんでねッ! 延滞料金は取られる前に返さねぇとなッ!」
ツェルトは鎖を引っ張りながら、両足を踏ん張った。
二匹は動きを抑えられたまましばらく足掻き続け、そして、何度も転びながら走るウェル博士が見えなくなった頃……。
「バオオオオオオオオオオオッ!」
「ヴァアアアアアアアアアアッ!」
絶叫と共に、凄まじい量の高エネルギーが響と翔の身体から放出される。
「──ぐうッ!」
「こんの、バカ……ッ!」
「──くッ!」
「翔……立花さん……ッ!」
眩い光が消えた時、そこにはギアを解除された二人が気を失っていた。
「おい、大丈夫かッ!」
「立花ッ! 立花、しっかりしろッ! 立花ッ!」
地面に崩れ落ちそうな響の肩を支え、翼はふと気が付く。
(左腕は……無事なのか……? 翔の脚も……? これは……)
一方、純の方は鎖が解かれた翔に肩を貸しながら、ツェルトの方を振り返っていた。
「何処へ行くつもりだ?」
「家に帰るのに、お前の許可がいるのか?」
ツェルトはワイヤーで高所へと登ると、純に抱えられた翔の方を見ながら呟く。
「風鳴翔、か……。覚えておくぜ」
そうしてツェルトは、エアキャリアの方角へと去って行った。
残された装者達は、翔と響が発した高エネルギーにより沈下
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