第20節「血飛沫の小夜曲(後編)」
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リムの背中に突き刺される。
両目を真っ赤に染めた翔がネフィリムを滅多刺しにする姿は、まるで響の痛みを思い知れとでも言うようで……彼が抱いたありったけの怒りと憎悪が込められていた。
「翔……立花……ッ!」
「クソッ! こいつ、外れねぇのかよッ!」
「ダメだ……もしここから抜け出して、二人の方に割り込んだとしても、狙いが僕らに向くだけだ……ッ!」
「じゃあどうすりゃいいんだよッ!」
やがて暴走翔は刺すのを止めると、変形していない方の手で、ネフィリムの背中のど真ん中へと貫手を放った。
グチャグチャグチャ……ブチッ……ブチブチブチャブチィッ!
生々しい音と共にねじ込まれ、引き抜かれた手。
緑色の体液が飛び散り、血管を引き千切りながら翔が引っこ抜いたのは……赤く点滅しながら胎動する、ネフィリムの心臓だった。
「……〜〜……〜〜ッ!」
そこへ、暴走響が跳躍し、右腕を巨大な槍状に変形させて迫る。
〈狂装咆哮〉
引っこ抜いた心臓を無造作に投げ捨て、暴走翔がネフィリムの身体から飛び退いたその直後、響の槍がネフィリムの身体を貫通し、跡形も残らずに爆散させる。
その余波はその場一体を包み込み、翼達を捕らえていたダチョウノイズを、まとめて消滅させた。
「……なんだよ……これ……」
そして……ツェルトは暴走する融合症例二人がネフィリムを蹂躙する姿を、ただ茫然と見つめていた……。
ff
「生命力の低下が、胸の聖遺物の制御不全を引き起こしましたか? いずれにしても──ごほッ、ごほ……ッ!」
「──マムッ?」
調と切歌が慌てて駆け寄る。
ナスターシャ教授が口元を抑えていた手を見ると、そこには吐き出された血が滴っていた。
「こんな時に……ッ! ごほッ、ごほッ……ごほッ!」
切歌は慌てて、機内通信でマリアを呼んだ。
「マリアッ! ねえマリアッ! 聞こえてるッ!?」
「マムの具合が……ッ!」
「マムッ! しっかりして、マムッ!」
操縦室の前で、耳を塞いでうずくまっていたマリアはすぐさま立ち上がると、操縦席に座るナスターシャ教授の元へと駆け寄った。
ナスターシャ教授はぐったりしており、服の胸元には吐き出された血が染みついていた。
「至急、ドクターの回収をお願いッ!」
「あの人を……」
調は心底嫌そうに眉を顰め、切歌も不満が顔に出てしまっている。
先程、あんなものを見せられたばかりだ。正直言って、ウェル博士とはここで手を切ってしまいたいというのが、彼女達の本音でもあった。
「応急処置は私でもできるけれど、やっぱりドクターに診てもらう必要があるッ! だからッ!」
「……わかったデスッ!」
しかし、この組織に医者はウェ
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