第20節「血飛沫の小夜曲(後編)」
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生々しい音の直後、ドサッという落下音と共に、右脚を失った翔が地面を転がった。
「しょー……く、ん…………ッ!?」
目を見開く響の目の前で、翔は脚から血を噴き出しながら絶叫した。
「……うッ、ぐうッ……があああああああああああああああああああああああああああああッッッ!!」
苦痛に藻掻き、悶える翔の声が戦場にこだました。
翔の冷静さを欠かせ、ネフィリムが喰らいつく隙を与えるために、ウェル博士は翔を挑発してみせたのだ。
融合症例の響とネフィリムを同列視し、囚われた姉や仲間達を思う心をなじることで……。
そして、ネフィリムの変態が加速していく。
四肢はより太く強靭に、胴体はより筋肉質に。
喩えるのなら、二足歩行できるカエル人間。そう比喩するのが一番、この異形なる巨人の外見を伝えるのに適切だろうか。
「聞こえるか? 覚醒の鼓動ッ! この力が、フロンティアを浮上させるのだッ! フハハハハハハァハハァッ!」
ウェル博士の高笑いが、更なる成長を遂げたネフィリムへと向けられる祝福のファンファーレが如く響き渡る。
もはや誰も、この男を止めることは出来ないのか……。
誰もがそう思い始めた、その時だった。
(……許さナイ……)
響の全身を、黒い衝動が駆け巡る。
(……許セなイ……)
翔の全身を、激しい憎悪が這い回る。
((オ前だケハ……許すモノカぁぁァ……ッ!!))
「ハハァハハハッ、ヒィハハハッ──ハハ……ハ…………ッ!?」
ウェル博士の顔が、一瞬真顔になる。
「「……〜〜……〜〜……〜〜」」
見ればネフィリムに齧られた二人の融合症例、その胸に何かが輝いているではないか。
それは、二人の胸に残る傷跡。お揃いだと笑った、フォルテの形をしたそれであった。
輝く傷跡から、二人の身体を塗り潰すように黒い影が広がっていく。
低く唸り、それぞれの声を二重にダブらせながら、翔と響の全身は黒に染まった。
「そんな……まさか……ッ!」
「あれは……ルナアタックの時の……ッ!?」
「マジ……かよ……!?」
「な、に……ッ!?」
思わず息を呑むウェル博士。
そこには牙を剥き、双眸を爛々と光らせた……二匹の獣が立っていた。
「……〜〜……〜〜……〜〜ッ!!」
「……〜〜……〜〜ッ! ……〜〜ッ!」
「これが、フィーネの記録にもあった、立花響と風鳴翔の……」
ヘリキャリアの操縦室では、切歌と調が口を閉ざす中でナスターシャ教授が。
「暴走、だとぉ……ッ!?」
そして二課仮説本部、ネオ・ノーチラスの発令所では、弦十郎を始めとした職員一同が、そ
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