第20節「血飛沫の小夜曲(後編)」
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「響けッ! 響けッ! Heartよッ! 熱くッ! 歌うッ! Heartよ──ッ!」
「ルナアタックの英雄よッ! その拳で何を守るッ!」
戦況は、響の方が優勢だった。
ネフィリムは図体こそ巨大ではあるが、その攻撃は力任せで大ぶりなものばかりだ。
動きさえ見切ってしまえば、響の中国拳法による怒涛の連撃を叩きこむ隙は大いにある。
ネフィリムが振り下ろした拳さえ弾き返し、響は両腕のパワージャッキを引き上げる。
「手と手、繋ぐぅぅぅッ!」
繰り出した右拳がネフィリムのどてっ腹に突き刺さり、収縮したジャッキからの衝撃波でネフィリムは後方へと大きく吹き飛ぶ。
ひっくり返ったネフィリムへと、背部のバーニアで加速しながら真っ直ぐに突き進む。
左拳を構えたそこに、召喚されたノイズが壁のように立ち塞がる。
両脚、右拳でそれらを粉砕したその時……ウェル博士は口元を吊り上げながら、予想外の一言を言い放った。
「そうやって君はッ! 誰かを守るための拳で、もっと多くの誰かをぶっ殺してみせるわけだッ!」
「は……ッ!」
その一言が、響の脳裏にライブ会場での調の顔を呼び起こした。
『それこそが偽善ッ!』
「ッえぇいッ!」
迷いのままに放った拳は手元が狂う。それが道理だ。
響が拳を突き出した先にあったのは……あんぐりと開いたネフィリムの大口だった。
バクッ
「──え…ッ!?」
一瞬の沈黙の末、響の口から洩れたのは、一言だけだった。
そして、次の瞬間──
ブチュッ! メキャメキャメキャッ……グチャッ! ブッシャァァァァァ……!
肉が喰いちぎられ、骨が噛み砕かれる生々しい音と共に、響の左腕の肘から先から、まるで噴水のように鮮血が飛び散った。
「立花ああああああああああああああああああああッ!?」
翼の絶叫が戦場にこだまし、翔とツェルトの耳をつんざく。
あまりにも凄まじい光景に、純とクリスは目を見開いたまま言葉を失っていた。
「ふ……ッ!」
その光景を、ウェル博士は両目をギラつかせた邪悪な笑みで見つめる。
「……え……?」
左肩を抑える響は、何が起きたか分からない……というような顔でネフィリムを見上げる。
見上げた視線の先で、ネフィリムは……暴食の巨人は、口元から行儀悪く真っ赤な血を滴らせながら、ゆっくり、ムシャムシャとそれを咀嚼していた。
それがようやく、喰いちぎられた自分の左腕だと認識したとき……
「……う、うう、うわああああああああああああああああああああああああああッ!!」
響は、かつてないほどの絶叫
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