番外記録(メモリア)・望まぬ力と寂しい笑顔
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た過ちへの慟哭。
少年の夢想は儚く、無残にも砕け散った。
他の誰でもない、今この場で最善を願った自分の手で、最悪の結果を引き起こしてしまったのだから。
「セレナアァァァァァァァァァァァァァァァァッ!!」
泣き叫ぶマリアの声が炎に吸い込まれ、虚しく響いていた。
これがツェルト、マリア、そしてナスターシャ教授の心に暗い影を落とす炎の記憶。
脚の自由と右目、伸ばしたはずの右手、そして最愛の妹を喪った日の記録である。
ff
(セレナ……。あなたと違って、私の歌では誰も守ることは出来ないのかもしれない……)
破損し、起動不可能となったたセレナのギアペンダントを握り、マリアは目を閉じる。
心に落ちた暗い影は、マリアの両肩に重くのしかかっていた。
『まもなくランデブーポイントに到着します。いいですね?』
「OK、マム」
ナスターシャ教授からの通告を受け、マリアは静かに立ち上がった。
ff
「……また……あの日の夢か……」
目が覚めると、医務室の天井が見えた。
ツェルトは身を起こしながら、左右を見回す。
「……結局……俺はマリィを泣かせてばかりだな……」
ベッド脇に置かれた義手を見つめながら、ツェルトはポツリと呟いた。
あの直後、マニュアルで稼働された鎮火システムが、実験室の炎を消していった。
それから、一人の研究員が救護班を連れて現れる。その男はまず、俺やマムを一瞥すると、迷わずセレナの方へと向かって行った。
『まだくたばっちゃいないな。大至急、この子をコールドスリープさせろ。急げ!』
『はッ、はいッ!』
救護班に指示を出す男の外見は、医療スタッフには似つかわしくない格好だった。
長い金髪を後頭部で一つに結び、チョビ髭を伸ばしたその研究員の目には、黒いサングラスが光っている。
男は救護班がセレナを運び出すと、次は俺の方へと向かってきた。
『ふむ……。粉砕骨折で筋肉はズタボロ、その上瓦礫の熱で腕が丸々ホットサンドみたいになっている……か。右腕の肘から下をバッサリ切断するしかないな』
『あん……た、は……』
苦痛で息も絶え絶えになりながら、俺は声を絞り出した。
『フン、今は俺の事よりも、自分の腕の心配をしたらどうなんだ? このジャリボーイに鎮痛剤の投与を。それと医療班に連絡、手術の準備をしておけ。こいつが付けることになる義手の作成も始めろ』
『了解ですッ!』
『おいッ! だから誰なんだよ、お前はッ!』
男は俺の言葉を無視すると、今度は降ってきた瓦礫からマリィを庇ったマムの方へと向かって行く。
『プロフェッサー、アンタはあの二人に比べりゃ大分マシな方だな。この先一生車椅子生活く
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