番外記録(メモリア)・望まぬ力と寂しい笑顔
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6年前、F.I.S.秘密研究施設
施設内の印象から、被験少女達によって名付けられた通称は『白い孤児院』。
F.I.S.がフィーネの魂の器となる憑代候補者を非合法な手段で揃えた際、シンフォギアへの適合性が見込まれた少女達を選抜し、研究と実験、そして訓練に用いてきたその施設は、隠匿性・機密性の高さから、今もって存在そのものが謎に包まれている。
これは、その白い孤児院で起きた、とある実験事故の記録である。
「グボアァァァァァァァァ!」
異形の白き巨人は、咆哮と共に壁を殴りつけ暴れまわる。
大きく開かれたその口からは唾液が糸を引き、巨人がひどく餓えているのが一目で見て取れた。
警報が鳴り響き、分厚い鉄の壁や特殊ガラスが振動と共に揺れる。
危険色の照明に照らされたオペレーションルーム内は、慌てふためく研究者達の声が飛び交っていた。
「ネフィリムの出力は、依然不安定……。やはり、歌を介さずの強制起動では、完全聖遺物を制御できるものではなかったのですね……」
怯える姉妹の方を振り返ったのは、今よりもう少し皴の少ないナスターシャ教授だ。
この頃はまだ車椅子ではなく、右目の眼帯もない。
自分が何をすべきなのか。ナスターシャ教授の視線から、自分の力が必要だと悟った妹は、ただ一言静かに告げた。
「わたし……唄うよ」
当時16歳のマリアは、セレナの言葉の意味を理解していた。
無論、ツェルトもだ。
「でも、あの歌は──ッ!」
「ダメだセレナ! そんなことをすれば、お前の身体が……」
「わたしの絶唱で、ネフィリムを起動する前の状態にリセットできるかもしれないの」
「そんな、賭けみたいな……ッ! もしそれでもネフィリムを抑えられなかったら──」
「マリィの言う通りだッ! 死ぬかもしれないんだぞッ!」
姉と兄貴分、二人の制止を受けてなお、セレナの意志は変わらなかった。
二人の言葉に、セレナは首を横に振ったのだ。
「その時は、マリア姉さんが何とかしてくれる。ツェルト兄さんや、F.I.S.の人達もいる。わたしだけじゃない。だから何とかなる」
「セレナ……」
「……くッ!」
胸に手を当て、セレナは二人を、そしてナスターシャ教授の顔を真っ直ぐ見つめる。
セレナの表情は笑顔でこそあったが、その笑顔にはどこか寂しさが滲んでいた。
「ギアを纏う力はわたしが望んだモノじゃないけど、この力で、みんなを守りたいと望んだのは、わたしなんだから」
そう言ってセレナは、アルビノ・ネフィリムが暴れ狂う実験室へと降りていく。
「──セレナッ!」
「セレナ……クソッ!」
追いかけようとしたマリアは、ナスターシャ教授に止められた。
ツェルトはただ見ていることしかできない己を呪っ
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