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曇天に哭く修羅
第二部
執念
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魔術師は素の治癒力こそ普通の人間より高いが魔晄による防壁や身体強化が無ければ肉体は一般人と変わらない程度の防御力しかない。

レックスの奇襲したタイミングはと言うと、時間が足りないので再び魔晄防壁を纏うことが不可能と言って良いものである。

しかし別に受ける必要は無い。

紫闇は弾丸が発射される前に銃口の前から移動して難なく弾丸を外させレックスの左手に有る拳銃を蹴り弾く。


「信じてたよレックス。あんたは本質的に俺と同じだ。勝敗が確定するその時まで絶対に諦めないってね。だから対応できたのさ」


紫闇には確信が有った。

レックスは今も自分を殺そうと考えている上に、まだ打つ手が残っているのではないかと。そしてその手を必ず決める策を練り続けている。


「あんたは俺よりも凄い。俺より上の存在になれる。貴族の運命から解放されて、【古代旧神(エルダーワン)】の支配から抜け出せるだろうよ」


紫闇は本気で思う。

この男は自身と戦っている最中に一度として絶望する気配が無かった。

しかし紫闇は違う。

彼の心は何度も折れかかったのだ。

レックスは紫闇を倒すという一念を持ち続けたまま最後まで頭を働かせていたのだから天晴れというしかない。

本当に『負けるはずが無い』、『絶対に勝つ』といった思想が他の思考を凌駕していなければ出来ないことだ。


「俺は諦念を受け入れない強い気持ちこそが運命を変える力なんだと思うし信じている。だから、あんたにはやり直してほしい」


レックスは体を震わせ空を見上げた。

一筋の涙を流しながら。

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