第18節「刻み込まれた痛み」
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る苦痛と、己の腕が焦げていく臭い。
鮮明に思い出されたそれらの記憶は、ツェルトの身体を駆け巡り、中枢神経を刺激した。
「うッ……うぅ……ヴォえェ……ッ」
再び静寂を取り戻した廃工場。曇天の下で、ツェルトは嘔吐した。
(俺は……ヒーローには、なれない……。見ず知らずの誰かどころか、セレナも助けられず、マリィを泣かせてばかりの俺が……ヒーローになれるわけがない……ッ!)
抉られた心の傷に、己が無力を叫びながら……。
ff
『アジトが特定されました。襲撃者は退けましたが、場所を知られた以上、長居は出来ません。私達も移動しますので、こちらの指示するポイントで落ち合いましょう』
「そんなッ!? あと少しでペンダントが手に入るかもしれないのデスよッ!?」
『緊急事態です。命令に従いなさい』
それだけ通告すると、ナスターシャ博士は一方的に通信を切断した。
切羽詰まっているのが語調の厳しさからも伝わってくる。切歌が悔し気に歯噛みした。
「さあッ! 採点結果が出た模様です……あれ?」
司会が振り返った時、既に調は切歌の手を引いて足早にステージを降りていくところであった。
「お、おいッ! ケツをまくんのかッ!」
クリスの売り言葉も意に介さず、調は一直線に劇場の出口を目指す。
「調ッ!」
「ツェルトがいるから、大丈夫だとは思う。でも、心配だから……ッ!」
そう言われては、切歌も受け入れざるを得ない。
二人は駆け足で劇場の階段を昇り、外へと向かって行った。
その様子を見て、翼も立ち上がる。
「翔、立花、爽々波、追うぞッ!」
「おうッ!」
「了解です」
「未来はここにいて。もしかすると、戦うことになるかもしれない」
「う、うん……」
四人は席を立ち、切歌と調を追って駆けだしていく。
その後ろ姿を見つめながら、未来は両手を祈るように組んだ。
「響……やっぱりこんなのって……」
ff
校内の構造は把握している。
響達が二人に追いつくまでに、そう時間はかからなかった。
校門のすぐ近くで二人を挟み撃ちにし、五人で取り囲む。
「切歌ちゃんと、調ちゃん……だよね」
「5対2、数の上ではそっちに分がある。だけど、ここで戦う事で、あなた達が失うもののことを考えて」
調は周囲の人々……リディアンやアイオニアンの生徒達や、その家族、外部から来た人々を見回しながら言い放つ。
「なッ!」
「お前、そんな汚い事いうのかよッ! さっき……あんなに楽しそうに唄ったばかりで……」
クリスの言葉に切歌は一瞬、調の方を振り返り……。
「ここで今、戦いたくないだけ……そ、そうデス、決闘デスッ
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