第18節「刻み込まれた痛み」
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が付いた時には、追手の米兵はほぼ全滅していた。
「さて、と。片付きましたか」
召喚したノイズの群れを消していくウェル博士。
既に爆炎は消えており、工場内に残っているのは炭まみれの重火器だけだ。
と、その時――
「ひッ……ひいぃぃぃぃぃッ!」
生き残っていた兵士が一人、銃を放り出して工場の外へと走り出した。
「おやおやぁ……? まったく、しぶといですねぇ……。生かして帰るわけにもいきませんし、処分しておかなくては」
兵士が逃げた方向へとノイズを放ち、自らもその場所へと歩いていくウェル博士。
(容赦ねえな……。だが、本国からの追手だ。生かして返せばろくなことがないだろうし、癪だけどドクターの判断は正解……か)
勢いに任せて飛び出したはいいが、特にできることもなく、ただウェル博士がノイズを操り追手を虐殺していく姿を間近で見せつけられただけだったツェルトは、エアキャリアへと戻ろうとした。
――耳をつんざく、マリアの悲鳴が鼓膜を貫くまでは。
『やめろウェルッ! その子達は関係ないッ! やめろォォォォォッ!!』
「ッ!? 転調・コード“エンキドゥ”ッ!」
天井へとワイヤーを放ち跳躍、工場の屋根を突き破って外へ飛び出す。
眼下を見下ろせば、そこには……三人の野球少年へと襲い掛かるクロールノイズの姿があった。
「ッ! 間に合えぇぇぇぇぇぇッ!!」
ツェルトが射出した二本の鎖が、ノイズへと向かって真っすぐ突き進む。
だが……一瞬遅かった。
射出された楔が地面に突き刺さったのは、ノイズが少年たちと共に炭素分解された直後……。無残にも、好奇心から寄り道してしまった部活前の野球少年達は、一瞬にして死体も残さず命を奪われたのだ。
『ああああああぁぁぁッ!』
床に突っ伏して慟哭するマリアの咆哮。それをただ見つめるナスターシャ教授。
仕事を終え、ニンマリと嗤うウェル博士。
そして……アームドギアである鎖を収納したツェルトは、工場の屋根にガックリと膝をつく。
「間に合わなかった……。また、間に合わなかった……」
右手の義手を見つめながら、うわ言のように震える声で呟く。
「伸ばしたこの手はいつも……守ろうとしたものばかりすり抜けて……うぅッ……」
ツェルトが慌てて口を押える。
脳裏にフラッシュバックするのは、炎に包まれたあの日の研究室。
先程までの工場内のように赤く染まっていた視界。
そして失ったはずの右腕に、今や鋼の義手となったはずのその場所に蘇る、忘れられない感触。
セレナを炎の海に突き飛ばし、直後、高温化した瓦礫に腕が押しつぶされた瞬間の、あの感覚。
肉を潰されながら焼かれ
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