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夢幻水滸伝
第百三十三話 高度を下げてその十二

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「雲にはな」
「ああ、そればわしもわかってる」
 麒麟は己の主に応えた。
「ほんまにな」
「まさか」
 今度は白澤が言った。
「雲やなかったら」
「海か」
「海の中におったら」
 どうかとだ、白澤は施に話した。
「どないや」
「海の中までは」
 施は苦い顔のまま述べた。
「こっちもな」
「斥候送ってへんかったな」
「そうやった、海の上は見たが」
 そして水軍も多く展開している。
「海面から見える範囲までで」
「海の中のそこそこ深くまではやな」
「見てへん、ってことは」
「水軍は海の中に攻撃を加えるんや」
 羅はすぐにこの指示を出した。
「術や炮烙を放ってな」
「棟梁、あれを!」 
 空船に乗っている兵の一人が眼下を指差して叫んできた。
「下が!」
「まさか!?」
「旅順が!」
 この名の戦艦がというのだ。
「真っ二つになりました!」
「あれは」
 見れば左右に副砲を多く持つ戦艦が今まさにだった。
 中央から横に真っ二つにされていた、エンジンや火薬庫をやられた訳ではない様で爆発は起こらず乗員達は急いで艦から降りて救命ボートに乗り込んだり海に飛び込んでいるが。
 その惨状を見て羅も施も確信した。
「中里やな」
「あいつの一撃やな」
「あいつの童子切や千鳥やったらな」
「軽く一閃させただけで戦艦も真っ二つや」
 そうなってしまうというのだ。
「そやったらな」
「来るな」
「ああ、今から」
 まさにと言うのだ、そしてだった。
 戦艦が真っ二つになり沈もうとしている艦の横から二十以上の者達が出て来た、彼等が凄まじい速さで蓬莱のすぐ後ろに来た。そこは中国の星の者達がいる本陣が傍にある。
 そこには中里と芥川もいた、二人は羅と施の横に来て言ってきた。
「さて、今からな」
「一騎打ちを挑みたいんやが」
「海の中に潜んでたか」
 羅は施と共にその二人を見据えて言った。
「自分等は」
「まさかと思ったやろ」
 芥川は狐の背に馬乗りになった状態で腕を組んで不敵な笑みで羅に応えた。
「これが」
「想像もせんかったわ」
「その想像をせんことをする」
「それが戦ってことか」
「戦いは詭道なり」
「孫子か」
「その孫子の言葉は何時使うか」
 それはというと。
「こっちが弱い時や」
「それは思ってたが」
 施は苦々しい顔で言った、見れば芥川と中里の周りには日本の二十人の星の者達がいる、皆格闘に秀でた者達だ。
「しかし」
「海の中からとはやろ」
「ほんま想像もせんかったわ」
 それこそというのだ。
「全くな」
「さて、この場合やが」
 芥川は施にも言葉を返した。
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