第八十七話 元服と初陣その四
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「その時はな」
「兄上が、ですか」
「家を継ぐ、そしてお主もその時は早くなるが」
「元服も」
「してもらってな」
「当家の為にですか」
「働いてもらう」
松壽丸に確かな声で話した。
「よいな」
「承知しました」
松壽丸は兄に強い声で答えた。
「それでは」
「お主から貰った書を読んでわかった」
「それがしが、ですか」
「わしを助けてくれて家を栄えさせてくれる」
「そうした者とですか」
「確信した、だからな」
それでというのだ。
「お主はわしの片腕になってもらう」
「そこまで言って頂けますか」
「是非な、井上家のこともある」
「あの家ですか」
「お主にしたことは忘れておらぬ」
決してというのだ。
「わしもな」
「それでは」
「あの家はまた何かするであろう、少なくとも横暴が目立つ」
毛利家の中においてというのだ。
「謀反なり他の家につくなりな」
「何をするかですな」
「わからんからな」
「だからですか」
「あの家を何とかせねばならず」
そしてというのだ。
「他の家のこともな」
「気をつけねばならず」
「やはりその為にはな」
「毛利家自身が強くなる」
「それが大事であるな」
「左様ですな」
「ではお主の考えを父上ともお話するが」
それでもという言葉だった。
「もうな」
「決まっていますか」
「もうな」
「そうですか」
「だからな」
それでというのだ。
「ここはな」
「はい、では」
「お主の考えで政をしていこう」
「そうして当家の力をつけ」
「兵も増やしていこうぞ」
「さすれば」
「そしてお主それからのことも考えておるな」
「はい」
松壽丸は弟に確かな声で答えた。
「実は」
「やはりそうか」
「井上家は無理でも他の家臣達の家を従わせ忠義を約束させ」
「家の結束を高めていってか」
「そして安芸の国人達をです」
その彼等をというのだ。
「取り組んでいきましょう、我等は先の国人一揆で立場を得てもいます」
「国人の一人にしてもな」
「それでもそれなりの」
「そのそれなりをですか」
「活かして」
そしてというのだ。
「そこからさらにです」
「力をだな」
「伸ばしていけば」
毛利家自体のそれをとだ、彼はただ家の中だけでなく安芸の国人達のことも頭に入れてそれで文を書いたのだ。
それでだ、今も兄に言うのだ。
「他の国人達も取り込んで」
「徐々に力をつけてか」
「はい」
それでというのだ。
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