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戦国異伝供書
第八十七話 元服と初陣その一

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               第八十七話  元服と初陣
 三年の歳月が過ぎ松壽丸から猿渡城から追い出した井上家の次男が死んで井上家の他の者達が彼に城を戻した、だが。
 その彼等の態度を見てだった、松壽丸の家臣達はここでも苦々し気に言った。
「あの態度は何か」
「まるで譲る様ではないか」
「自分達の家の者が奪ったというのに」
「それを悪びれもせず」
「あの様にふてぶてしい態度を取るとは」
「あれでは家臣ではない」 
 とてもというのだ。
「謝りもせぬ」
「あの態度忘れてなるものか」
「目にもの見せてくれようぞ」
「だからそう怒るでない」
 松壽丸はその彼等にこう返した。
「城は戻ったからな」
「よしとせよ」
「そう言われますか」
「うむ、井上家のことは父上が断をされてな」
 そしてというのだ。
「決められることじゃ」
「だからですか」
「今は騒ぐことはない」
「そう言われますか」
「そうじゃ、ここで騒いでどうなる」
 こうも言うのだった。
「一体、騒ぐよりも考えよ」
「と、いいますと」
「どう考えるか」
「それは」
「うむ、当家のことを考えよ」
 毛利家のことをというのだ。
「井上家のことも含めてな」
「そういえば松壽丸様はいつも言われていますな」
「まずは家がまとまっていることであると」
「親兄弟が争わず」
「家臣が一つになること」
「それが第一であると」
「だからな」
 それでというのだ。
「ここは家全体のことを考えるのじゃ」
「井上家のことに怒るより」
「それよりも家全体のことですか」
「そちらを考えるべきですか」
「当家は安芸の国人の一つに過ぎぬ」
 それだけの存在だというのだ。
「安芸には他に幾つもの強い家があるな」
「吉川家、小早川家に」
「守護の武田家に」
「他にも家がありますな」
「幾つも」
「そして西に大内家がありな」
 今は従っているこの家にというのだ。
「そして出雲にはな」
「尼子家がありますな」
「あの家はどんどん大きくなっていますな」
「間もなく大内家と張り合うまでになりますな」
「そこまでの存在に」
「だからな」
 それでというのだ。
「我等はそうした内外全体を見てな」
「そうしてですか」
「毛利家のことを考えるべきですか」
「そうすべきですか」
「そうじゃ、井上家のことは小さい」
 全体から見ればというのだ。
「だからな」
「それで、ですか」
「この度は」
「我等はですか」
「考えていきますか」
「左様、怒るよりも一旦気を鎮めてな」
 そしてというのだ。
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