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神機楼戦記オクトメディウム
第5話 舞いの神:後編
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いるのに、それをかぐら自身が認識出来ないように意識の一部を削り取られているようである。
 そして、その深刻な問題を抱えるかぐらは……。
「どうせ私の足なんてなお──」
「いけないわ!」
 それ以上は言わせてはならないと、姫子は弾かれるように咄嗟にかぐらの言葉を遮るように思わず大声をあげるのであった。
 その姫子の機転により、何とかかぐらは一線を越えずに事なきを得たのだ。
 そして、そのように心の追い詰められた姫子は考える。
 こういう深刻な問題は、本来ならば頼れる大人……そう、姫子にとっては和希のような人に任せるのが妥当だろう。
 しかし、生憎和希は神機楼に選ばれていないが為に、戦場に出る事は出来ないのである。ならば、ここはまだ子供であるが姫子が自分でやらなければならないだろう。
 それが、和希から教わった事を他の誰かに施すという責務だと姫子は思うのであった。こうして人は繋がりを繋げていくのだろうと彼女は想いを馳せる。
 だから、姫子は敢えて心を鬼にして言葉を選ぶ。確かに、かぐらは被害者だ。自分の足が治っているにも関わらず治らないという嘘を大邪から吹き込まれて。
 だが、自棄になって越えてはいけない線を越えようとした事、そして何よりこの世界を壊してしまってもいいのだと思わされている事。それが正しい訳はないのだから。
「かぐらさん……あなたは間違っているわ!」
「うぐっ……!」
 取り乱していたかぐらは、そう真正面から姫子に言われて思わず口を噤むのであった。こうなっては彼女には姫子に付け入る隙というものが感じられなかったからだ。
 しかし、それでもかぐらは説得に応じてくれる様子はなかった。
「でも、この戦いはまだ私の優位には変わりはないわ。だから、見せてあげる♪」
 と、ここで自分の優勢を再確認したかぐらは、表向きではあるが自分の調子を取り戻したかのような口調で言いながら、空を陣取ったまま愛機の両の手に扇を持たせてポーズを取らせていく。
 それは、両手を広げて『何か』をその身に集めようとしているかのように思われた。
 快晴の今日を最大限に利用した手段であるのだった。そう、彼女が今集めているのは太陽の光なのである。
 その光をその身に浴びて、それを凝縮して敵にぶち込む大技。それこそがイワトノカイヒの大技『日輪の双扇砲』なのである。
 そんな姿勢に出た敵を見据えながら姫子は思う──今この時が最大の好機だ、と。
 それは敵が力を蓄え始めた事に加え、自分が大邪の被害者であるかぐらを『救い出す』のにはこの瞬間を逃す手はないと思われたからだ。
 そして、姫子の駆る弾神には打ってつけの手段があるのであった。敵の神機楼を討ちつつ、それに取り込まれたかぐらを助ける為のものが。
 そう思い至れば後は善は急げというものであろう。姫子は
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