第5話 舞いの神:後編
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あったのだ。
そして、その『浸食』は瞬く間に確実にかぐらの心を蝕んでいったのである。
「大好きな踊りを踊れない……こんな世界なんか……」
◇ ◇ ◇
「そして、今こうして私は大邪に選ばれて力を貸す立場になったという訳よ」
「そんな事が……」
その事実は、現代に生きる姫子には超然的すぎる内容で、頭の整理が付けづらい状態にしてしまうのであった。
だが、成績は中の中程度はあり、人並みに頭の働く姫子はそれなりの性能を誇る頭で内容の整理へと踏み切っていく。
まず、その修道女という存在が一筋縄ではいかないだろうという事である。その存在は人知の行き届かない何かを持っていると考えるべきだろう。
何せ、ちゃんと良心の働いていたかぐらの自制心をバターのように溶かしてしまい、こうして破壊活動に荷担させてしまう程なのだから。このような芸当を平然と行ってしまう辺り、姫子は自分の世界の常識で推し量ってはいけない相手であると肝に命じるのであった。
そして、ここからが重要な事である。
(うん、このかぐらさんの言っている事は『矛盾』しているね)
それが、今忘れてはいけない事項なのであった。
かぐらは足の不調を抱えていると言ったが、今こうして『神機楼の操縦』を行っているのである。
これのどこに矛盾点があるかという話になるが、ここで思い出して欲しい。
神機楼とは、搭乗者の動きをダイレクトに伝達して稼働するという仕様なのである。
そして、かぐらは今こうして何の問題もなく神機楼を操っていた事は紛れもない事実なのだ。そう、とてもではないが足に不調を抱えている状態ではそのような芸当は出来ないだろう。
故に、今から姫子がする事は決まっていた。意を決して姫子はこう口にする。
「少し落ち着いて下さいかぐらさん」
「何よ!?」
不意にそう敵から言葉を掛けられたかぐらは、戸惑いの余りに思わず口調を荒げてしまう。だが、それに臆する事なく姫子は言わなければならないだろう。
「かぐらさん、あなたは足の具合が良くないと言いましたよね? でも、今こうして神機楼を操縦している……つまり、今のあなたは足が満足に動かせる、そういう事ですよ」
「っ!?」
そう言われてかぐらは困惑するのであった。敵には正確な情報を教えられているにも関わらず、何故かそれを真実だと認識出来ないのだ。
故に、彼女は混乱してしまう。
「うるさいうるさいうるさい!」
まるでだだっ子のような口ぶりとなってしまったが、頭の中が整理出来ないかぐらはそうやけを起こすしか出来なかったようだ。
そんな敵の様子を垣間見ながら姫子は思う。
──思ったよりも、その修道女……そしてそれを介した大邪自身のかぐらへの意識操作は相当深いものになっている、と。
現に足の負傷は完治して
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