第5話 舞いの神:後編
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る。それは、両親が娘に踊りが得意な子に育って欲しいと名付けられた事から始まるのだ。
そして、その両親は習い事を子に好きにさせるにおいて良心的な教え方をしていたのであった。様々な事に興味を持つ幼い頃から教え、そして決して強要するような事はしなかったのである。
それが功を奏してかぐらは踊りが好き、かつ得意だという理想的な育ち方をしていったのだ。だから、かぐら自身が自分が踊りを踊って活躍出来る事が誇りであり生き甲斐となっていたのだった。
だから、彼女が足を負傷して一時期ダンスを行えなくなっていた時は不安で仕方なかったのである。無理もないだろう、彼女にとってこれは自分の一部なのであったのだから。
故に、彼女の脳裏に最悪の事柄がよぎろうとしていた。──もし……。
その時であった。かぐらが療養に利用している自宅の自室に何者かが、まるで先程からそこにいたかのようにさも当たり前のように彼女の傍らに存在していたのである。
「? あなた誰!?」
当然その不法侵入、そして幽霊染みた芸当にかぐらは驚きを隠せずに驚愕し、そして身構えていた。
その人物は一見すると清楚な修道女──シスターのような出で立ちをしており、そこから発せられる雰囲気は神々しいの一言であるのだった。
だが、誰もいないと思われていた部屋に忽然とその姿を現していたという事実は、その雰囲気を得体の知れないものへと変貌させていた。
そのような大胆不敵な行動を平然と行う者に対する対処は一つであろう。
「……警察呼びますよ!?」
それが、この犯罪行為スレスレの行いに対する、現代におけるもっとも適切な対処と言えるだろう。
だが、その者はそのような現代で培われた概念が通用するような存在ではなかったのであった。
「……夕陽かぐらさんね? 率直に用件を言うわ。私と共に来なさい」
「誰があなたのような得体の知れない人と?」
かぐらは至極真っ当な答えを口にする。誰とも知らない人間に好き好んで着いていくかというのだろう。
しかし、そう言われても修道女は全く動じる事なく、まるで脚本を読んでいるかのように淡々とこう告げてくるのであった。
「そう言うのはもっともですね……。でも、あなた。こんな自分のしたい事が出来ない世界、壊してしまいたいとは思いませんか?」
「何を馬鹿な事言っているの……」
突拍子もない事を言い出す修道女に対して、当然理性の働く頭でかぐらは反論する。
しかし、相手の頭の中に入り込んできて包み込むかのような言葉では言い表せない雰囲気に、かぐらの心はじわじわと溶かされるような感覚となっていく。
加えて、かぐらは自分の足の調子が優れない状況にあり、心に不安を抱えていたのである。そこへ修道女の振る舞いは、まるで自分の胸の内を見透かし、そして取り込むかのような力が
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