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神機楼戦記オクトメディウム
第2話 戦士達の帰還
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その瞬間、姫子に流れる時は一瞬止まり、そして再び動き出したのであった。
(勝った! 計画通り)
 そして姫子は心の中で一人勝利の余韻に打ち震える所なのだった。
 ここに巫女二人の意見は一致した。後は戦いの疲れを汗と共に流すだけだろう。なので、二人は早速この場を後にすべく和希に言葉を掛ける。
「ありがとう和希さん、ひとっ風呂浴びさせてもらいますよ♪」
「私も……『姫子』とのお風呂の時間をたっぷり堪能させていただきます」
 そのようにどこか含みのある言葉を漏らす千影であった。
 その後、巫女二人がこの場を去った後に、ぽつりと士郎は呟くように言うのであった。
「……俺にもあの二人のように神機楼の力があれば……」
 そう。士郎はいたいけな少女二人に前線で戦わせ、そして未だ力になれない自分を責めるような感情に苛まれているのであった。
 悔しげにそう呟く士郎を見ながら、和希は宥めるように彼に言葉を掛ける。
「士郎。今はまだ『剣神』を動かすのに必要な力が備わっていません。あなたの気持ちは分かりますが、ここは暫しの辛抱ですよ」
「兄さん……」
「だから、それまではあなたは今自分が出来る事……例えば剣神の力をより引き出せるようにする為に修行に励むなどをすべきです」
 そうはやる士郎を嗜めるように言う和希に続いて、今まで目立たないでこの場にいた者も彼に声を掛ける。
「和希さんの言う通りですよ、士郎。焦っては物事を悪い方向に導くだけです。ここは辛抱所ですよ」
 その声の主の名は『神奈木幸人(かみなぎ・ゆきひと)』といい、和希の補佐的な立場をこなす少年であった。
 年齢は士郎と同じ16歳であった。そして、士郎が所謂『男の娘』タイプの雰囲気であるのに対して、彼──幸人はアイドル的な端正な容姿をしていたのである。髪の色が淡い灰色な事もそれに拍車を掛けているのであった。
 そんな彼の姿と口調は、それだけで対峙する者全てを蕩けるような恍惚感へと苛んでしまう程の包容力を要していた。
 それを受け士郎は、彼は本当に自分と同じ高校一年生なのだろうかと疑問が頭に浮かんでしまう所であったが、気持ちの焦る今の士郎はそんな彼の言葉では説明出来ない力が有難かったのである。
「ありがとう、兄さん。そして幸人」

◇ ◇ ◇

 士郎がそのような複雑な感情を抱いている間に、千影と姫子の二人は絶賛大神家の大浴場を堪能している真っ最中なのであった。
「あ〜、いい湯〜☆」
 姫子の口から思わずそのような感嘆の声が漏れてしまう。それだけこの浴場は絶品なのであった。
 まるで銭湯のような広々とした空間、厳かな雰囲気を醸し出し、加えて数十人入り切る程の檜で縁取られた湯船……。
 実は姫子の家は名家であり、彼女の家も豪邸なのであるが、洋風なそことは違う、和風であしら
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