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神機楼戦記オクトメディウム
第2話 戦士達の帰還
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す。分かっておられるなら私の心配はいらないですね」
 そう、和希はこの場にいる者達が自分達に課せられた宿命の重さをちゃんと認識しているかを知りたかった訳であり、今のやり取りからその心配はどうやら必要ないだろう事が分かったのであった。
 無論、その事は千影と姫子も分かっている所だ。
 そして、皆の真摯な意識を噛み締めた和希はこう結論付ける。
「なので、これから『大邪』との戦いは本格化してくるでしょう。敵の幹部クラスが出てくる事を念頭に置いておくべきですね」
 その和希の弁に意を唱える者はいなかった。皆もその気持ちは同じなのである。
「彼等は邪悪な存在なれど神の領域の者達。故に世界の軍事力が誇る近代兵器は通用しません。だから私達がやらなければならないのです」
 それは、現代に生きる少年少女には酷な内容であるのだった。だが、これにも異を唱える者はいない辺り、ここにも和希の人望というものを垣間見る事が出来るであろう。
 このように空気の張り詰める内容の話を和希はしてきた訳であるが、ここで彼はそんな雰囲気を和らげて、優しげな態度で千影と姫子に言うのであった。
「ですが、今からずっと気を張り詰めていては心をすり減らすだけです。時が来るまで肩の力を抜いて英気を養っておくのも戦いです。ですから……」
 そう言うと和希は、にっこりとした表情で二人へと提案する。
「頑張ったお二人は、これから私の屋敷の浴場で汗を流していくといいでしょう」
 その提案に真っ先に食い付いたのは姫子であった。
「え? 和希さんいいんですか?」
「勿論ですよ。お二人が頑張ったご褒美です」
「欲しかったんですよねぇ、これ♪」
 嬉々として喜びの態度を示す姫子。この場合『欲しかった』はニュアンスがおかしいが、それだけ彼女が嬉しいという事なのであった。
 それは、彼女がどこかのSF(すこし、ふしぎ)な漫画のヒロインの如く、大の入浴好きである事に起因しているのだった。さすがに昼間っから風呂に入っているという事はしないのではあるが。
 それはさておき、要は姫子は大神家の大浴場にありつけるかどうか、これだけが最大の論点であったのだ。
 まず、このようにして和希からの承諾は得ているのである。後の問題と言えば……。
「千影ちゃん。和希さんもああ言っている事だし、お言葉に甘えさせてもらおうよ」
 そう、相方の了承というものが必要であったのだ。これから待っているのは大掛かりな大浴場であるのだ。それを一人で入るというのは少々味気無いというものなのだから。
 だが、姫子にはある『勝算』があるのだった。故に彼女は心配はいらないだろうと踏んでいた。
 そして今、千影の意見が出てくる事となる。
「ええ、私も入らせてもらうわ。和希さん、ありがとうございます」
「お安いご用ですよ」
 
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