第1話 戦いは始まっている
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はないが現実の出来事だと受け止める事が出来ない位であるのだから。
だが、千影はその戸惑いの感情をすぐに捨てる事となる。彼女はモニター越しに逃げ惑う街の人々がその目に入って来たのだから。
今でも自分の置かれている状況は現実のものだと実感は出来ない。だが、この『力』で人々を救う事が出来るのは紛れもない事実であるのだ。故に千影は迷いはなかった。
なので、自身の準備は済んだ千影は、『次』へと意識を移す。
『次は姫子の番よ、準備は出来てるかしら?』
そう千影は巨大ロボット越しに姫子に呼び掛けたのであった。しかし、機械を通しての筈なのに彼女の声は普段の肉声を変わらないイメージのままに姫子に届いていたのである。
その事に姫子は相変わらずの安堵を覚えながら、千影へと言葉を返すのであった。
「勿論だよ、千影ちゃん♪」
そう言って姫子はコックピットの中から見ているだろう千影へと屈託のない笑みを浮かべてみせた。その姫子の振る舞いが今非現実的な世界で戦っている千影にはとても心の支えになる所であった。
そんな千影の心境を姫子には届いているかは分からないが、姫子も先程の千影と同様に非現実的な振る舞いに踏み切る。
姫子も懐から何かを取り出して、それを天高く掲げたのである。
それは、まるで数字の『9』を象ったかのような形状で、色は鮮やかな青の物……『勾玉』であった。
その勾玉を姫子は掲げながら高らかに唱えるのであった。
「またお願い、『弾神ヤサカニノマガタマ』!」
そして、勾玉は姫子の呼び掛けに応えるかのように青く目映く輝き、先程の千影の時と同じように──機械仕掛けの巨躯を呼び出すに至ったのだ。そして、それは姫子に仕えるかのように彼女の前で跪くのであった。
彼──ヤサカニノマガタマの姿は、一言で言えば鎧武者のようであった。それを機械で再現した姿だと言えよう。
しかし、『普通の』鎧武者とは一癖も二癖も違う特徴を彼は持ち合わせていたのであった。
まず、その背には和の姿である鎧武者には似つかわしくない、西洋風の黒いマントが携えられていたのである。
加えて言うならば、その体の色であろう。鎧武者ともなれば『赤』のイメージが強いであろうが、彼はものの見事にその対極たる『青』で全身をコーディネイトされていたのだから。
そんな異質な鎧武者であるが、主である姫子にはまるで忠義を尽くしているかのような振る舞いをする辺り、立派な『武』の者を想起させるには十分であるのだった。
そのように振舞う自分のパートナーたる弾神に応えるべく、姫子も先程の千影と同じく光の塊となって弾神の胸部へと飛び込んでいったのである。
後に姫子に待っていたのは千影と同じであった。ただっ広い闇の中に土俵風の足場とその眼前に外界を見る為のモニターが存在していたのであっ
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