第1話 戦いは始まっている
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れてくるだろう。そう、千影が今しがた取り出した物は一個の手鏡であったのだ。
いよいよを以て事の流れが掴めなくなって来たというものであろう。巫女がこの惨状に居るだけでも場違いだというのに、ここでその一人が戦いに役に立つと考える方がおかしい代物である鏡を掲げたのだから。
無論、彼女は遊びや悪ふざけを行っている訳では断じてなかったのであった。その事が今正に証明されようとしていた。
突如として、鏡の光に反応するかのように『何物か』がこの場に現出したのだ。
それは、巨大な人型兵器と呼ぶに相応しい姿をしていたのであった。全長は15メートル位はあるであろうか。
その身はシャープな流線型をした、身軽そうな様相だ。そして、極め付きにはその真紅のカラーリングが目に付く事であろう。
その姿を見ながら千影は呟いた。
「頼むわよ、『鏡神ヤタノカガミ』」
千影がそう言い切ると、鏡神と呼ばれたその巨躯は彼女の意思に呼応するかのような唸り声ともエンジン音ともつかない音声を発すると、彼のその人間なら目のある部分のランプのような箇所が爛々と光を灯すのであった。
次の瞬間、巨大人型兵器が現れた事でも異常事態だと言えるのに、更に目を疑う現象が起こったのだ。
突如として、千影のその身が目映い光で包まれたかと思うと、彼女は光の塊となって宙へと舞ったのであった。そして、鏡神の胸部にある緑色の水晶体のような箇所へと吸い込まれていったのであった。
別にこれは千影が鏡神にエネルギーにされて喰われた訳ではないので安心して欲しい。その証拠に、鏡神の内部で再び肉体へと戻った千影の意識が再稼働したのだから。
「今回も、問題なく機能しているわね……」
そう呟きながら千影は辺りを見回す。所謂『コックピット』と呼ぶのがしっくり来るだろう空間を一瞥しながら。
そう、ここは鏡神の中枢部なのであった。そして、千影はこれから『パイロット』となってこの鏡神を『操縦する』訳である。
だが、そこは一般的な巨大ロボットアニメで見られるような素人ではその仕組みを理解するのはほぼ不可能なレベルの機材が所狭しと並べられている訳ではなかったのであった。
代わりにそこにあったのは、相撲の土俵のような台であった。だが、四隅の角は無く、変わりに見事な円形となっている。
そして、千影の前方には外の景色が映し出されたモニターのような産物が、『宙に浮いて』存在していたのであった。
加えて、それらの土俵とモニター以外の部分は存在せずにただただ闇が広がるだけであったのだ。
先程からの超現象に加え、今の状態から、この鏡神が『まともな物理法則に従った機械』ではない事は一目瞭然といった所であろう。
当の『パイロット』たる千影もその事は重々承知であった。今でも自分の身に起こっている事が、とてもで
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