第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第21話 姉の方は別に……:後編
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族でありながら、それを誇りにして一生懸命な人だって」
そう言い始めた勇美を、豊姫は無言で、だがとても優しい表情を向けていた。
「だから、世間から『悪』と認識される人でも素晴らしいものを持っているんだと思ったんです」
「それが、勇美ちゃんが悪を目指そうと思った理由?」
豊姫は聞いてくる。
「いいえ、それだけじゃありません。今日、豊姫さんと話をした事も大きいです」
そこで勇美は一呼吸置き、続ける。
「悪である事を誇りにしているレミリアさんとは形が違うけど、豊姫さんも信念から悪を背負っているのは同じだと思いました」
「それは光栄ね」
豊姫は優しく言う。普通なら月人が地上の吸血鬼と同じに扱われては憤慨してもおかしくはないだろう。だが、豊姫はその例に漏れていたのだ。
そして、勇美は他の理由を挙げた。それは自分が育てられた環境の影響で、自分は正義にはなれないと思う所からであった。まっとうな善人としては扱ってもらう事が少なかったからだ。
人の言う事を真に受けるな、という人もいるだろう。だが、そういう育てられ方をした者は柔軟に自分自身を評価する能力が薄れてしまうのだ。
そして、最後の理由を勇美は豊姫に話す。
「後、依姫さんから教えてもらう事を貪欲に吸収するには、いい子ちゃんでは駄目だと思うんですよね。どんな手段を使ってでも教えられる事をモノにしていかなくちゃって」
それが依姫に対する自分なりの敬意だと、勇美は付け加えた。
そこまでを聞いていた豊姫は、突然勇美の頭を撫で始めたのだ。
「なっ、何するんですかぁ〜!」
突拍子もない豊姫の行為に勇美は顔を真っ赤にする。
「すごいわ勇美ちゃん、こんなに若いのにそんな立派な事を言うなんて〜♪ それにしても勇美ちゃんの髪ってサラサラで撫で甲斐があるわねぇ〜♪」
「だ、だからってやめて下さい〜!」
勇美は抗議すると、豊姫はピタリとそのはめを外した行為を止めたのだ。
「はい、止めました。これで文句ないでしょう」
「うっ……」
思わず勇美は言葉を詰まらせた。さっきまでは嫌がっていたのに、いつの間にか撫でられるのが悦びになっていたのだ。
「やっぱり豊姫さんには敵いませんね……」
勇美はちょっとすねたような素振りを見せるのだった。
「でも、こういうやり取りって何かエッチ漫画みたいですね」
だが勇美も負けじと応戦した。
「そういう発言をするとネチョになるからやめようね」
豊姫は一本取られたような心持ちで言った。
「応援しているわ、勇美。あなたが選んだ道は決して楽ではないけれど」
「存じています」
豊姫の言う事実は、勇美は十分承知であった。周りからは飄々として楽そうに見える豊姫の振る舞いであるが、今彼女と話して断じて簡単な事ではないと痛感したのだ。
こう
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