第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第21話 姉の方は別に……:後編
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である。
豊姫がレイセンの前で振る舞った姿こそが月人の一般的な姿であるのだ。だから、姉妹以外には地上に対して友好的な者は少なく、地上に危害を加えようとする者が多いだろう。
だから姉妹はそう簡単に守護者の役職から離れられないのだ。故に豊姫の夢を叶えるのは困難なのだ。
「叶うといいですね」
勇美はそう答えるしかなかった。だが彼女は心に決めるのだった。
自分が生きている間には月人の問題は解決しないかも知れない。だけど自分も生きている内に綿月姉妹が本当にやりたい事が出来る手伝いを何かしようと。
そして、勇美はそれを口にする。
「私、もっともっと依姫さんの元で修行します。それが今の私に出来るお二人への貢献ですから」
「嬉しいわ。でも無理にしなくてもいいのよ」
豊姫は目を細めながら憂いを含ませて言った。自分達の夢に他の人を巻き込むなんて御法度だと思いながら。
「いいえ、これは私もそうしたいと決めた事ですから」
「それならいいわ。でも、くれぐれも無理はしないでね」
「分かっています」
そこでこの話は決着は着いたのだ。だが、豊姫は新たな話題を挙げてきた。
「ところで勇美ちゃん、あなたの夢ってあるかしら?」
「えっ?」
この質問に勇美は虚を突かれた。まさか今度は自分に話題が振られるとは思ってもみなかったからである。
だが、勇美が躊躇ったのは質問されるのを予想していなかったためであり、質問に対する答えは既に彼女の中で出ていたのだ。
「はい、私は小説家になりたいです」
そして勇美はその理由を語り始めた。
母親の存在により夢や理想を壊される環境で育った自分だからこそ人に夢を与える仕事に就きたいと元々思っていたのだ。
それに加えて彼女が幻想郷に迷いこんだ事も大きく影響していた。恐ろしいながらも奥ゆかさを持ったこの世界に触れている内に、自分もそういう世界を文面に再現したいと切望するようになっていったのである。
「人に夢を与えたいという気持ちと、幻想郷を大切に思う気持ち、とてもいい夢だと思うわ」
「ありがとうございます」
豊姫に褒められて、勇美は照れくさそうにはにかんだ。
そして、勇美は今新たに決意した事が出来たのだ。
「あの、最後に一ついいですか?」
「はい、どうぞ」
申し出をする勇美を豊姫は促す。
「私決めました……私はこれから『悪』を目指します」
勇美の口から出たのは、そんな突拍子もない内容であった。普通の人がそれを聞いたら、気をおかしくしたのではないかと思うような事である。
「そう……」
しかし、豊姫はそんな勇美の発言を一切取り乱す事なく、実に落ち着いて聞いていた。
「先日、レミリアさんと戦って感じたんです。あの人は吸血鬼という世間から嫌われるような、退治されるのが慣わしのような種
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