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MOONDREAMER:第二章〜
第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第21話 姉の方は別に……:後編
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事よ」
「依姫さん……」
 豊姫にそう言われて勇美は合点がいった。
 依姫はスペルカードを受け入れる等、敵であっても敬意を示す武人であり、見習うべき所が多いのだ。
 だが、軍人や守護者としては、それでは甘いのである。そして時に冷徹な言動を取れなくてはいけないのが世の中という訳である。
「つまり、豊姫さんは依姫さんの代わりに汚れ役を引き受けているって事ですね」
「察しがいいわね」
 豊姫は頬笑みながら言うが、いつもの間の抜けたものではなく、どこか引き締まったものとなっていた。
「あの子にはいつも正々堂々としていて欲しいからね。あの子が卑怯な事する所なんか見たくないでしょ?」
「その通りです」
 勇美も同意した。いくら非情になる事が必要なこの世であっても、依姫が情け容赦なくなるような場面には居合わせたくないものである。
 その思いは周りの人間のエゴと言える事かも知れないが、同時に依姫自身非情にはなりたくないのも事実である。つまり、依姫が武人でいる事は周りと本人の双方が望んでいる事なのだ。
「成る程、豊姫さんが依姫さんの代わりに汚れ役を務めているというのはよく分かりました」
 そう勇美は一つの結論を付けるが、まだ腑に落ちない事があったのだ。
「でも、何でレイセンさんの前でそう振る舞ったのですか?」
 それが最後に残った疑問なのであった。レイセンの前では、わざわざ汚れ役を務めなくても良いだろうと。
 その疑問に対して、豊姫はこう答えていった。
「それは、敵を騙すにはまず味方からって言うでしょう? あの子は兵士になったばかりだったから未熟だった訳で、私の本当の考えを言ったら境界の妖怪の前でボロを出しかねないと思ったのよ」
 その豊姫の主張を勇美は納得した心持ちで聞いていた。レイセンには失礼だが、確かに彼女はそそっかしそうに勇美は思えたからだ。
 勇美がそう思う中、豊姫は続ける。
「それに、『百聞は一見にしかず』よ。口で私達月人がどういう思想なのかを説明するより、実際にどういう言動をするのか身を持ってあの子には知って貰おうと思った訳よ」
 それで豊姫は散々地上やそこに住む者をこけ下ろし、迷いの竹林を素粒子に還そうとする素振りを見せたのである──これが月人というものであると。
「でも、そのやり方だとレイセンさんに間違った思想を植え付けかねませんか?」
 豊姫の考えを理解した勇美であったが、その方針の危険性に気付き指摘した。
「その点は大丈夫よ。あの時レイセンは私に恐れのようなものを抱いていた素振りを見せていたから月人のやり方は容認しなかっただろうし……」
 そこで豊姫は少し間を置き呼吸を整えて続けた。
「それに、依姫がいるんですもの。レイセンに間違った認識をさせたままにはしないわよ」
 そして満面の笑みでそう言ってのけ
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