第二章 勇美と依姫の幻想郷奮闘記
第21話 姉の方は別に……:後編
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りしようとしたのは感心しませんけど」
「あ、あれは出来心だったのよ」
「いえ、故意犯に思えてなりません」
「うっ……」
豊姫は言葉を詰まらせた。どうやらこの言い合いは勇美に軍配が上がったようだ。
そんなしょうもない勝利への余韻には浸らず勇美は続ける。
「それに、ここからが重要だと私は思うんですよね」
「何かしら?」
ささやかな敗北により、やや凹んでいる豊姫であったが続きを促した。
「それは依姫さんがあんなに立派な人になってる事ですよ。例えば依姫さんが豊姫さんを反面教師にしていたとしたら、ああはならないでしょう……私は母親が問題ある人だったからよく分かるんです」
そう勇美は言い切った。
それこそが彼女が一番感じる事であり、揺るがない真実なのであった。
その勇美の言葉を聞いて、豊姫は暫し呆気に取られるかのような心持ちになるが、意識を持ち直して生まれた疑問をぶつけた。
「それにしては、勇美ちゃんはいい子よね」
尤もな指摘だろう。問題のある母親に育てられた勇美が、何故まっとうな考え方が出来るのか。
「それはですね、妹の存在あってこそなんですよね。今どうしてるかな『楓』〜♪」
そう漏らしながら両手でハグをするポーズをする勇美。どうやら物凄く妹の事を溺愛しているようだ。
それを見ながら豊姫は微笑ましい心持ちとなった。──この子にも自分と同じように愛する者がいるのだと。
「嬉しい事言ってくれるわね、あの子──依姫の姉として喜ばしいわ」
そう言って豊姫はふんぞり返るように胸を張って言った。
「豊姫さん……結構胸ありますね」
勇美は歯噛みしながら言った。嫉妬のオーラ丸出しであった。
「あ、ごめんね」
「謝らないで下さい、余計に惨めになりますから……」
「うん、分かった」
と、またしても胸の事で場の空気をおかしくしてしまった勇美は仕切り直す。
「……とまあ、私が言いたいのは、豊姫さんが本当は地上を見下すような人じゃないのに、何でああいう事を言ったって事なんですよ」
「それはね……」
そこで豊姫は一息置いて呼吸を整える。
「ところで勇美ちゃん、世の中綺麗事だけで通ると思う?」
「?」
この突然の質問に勇美は首を傾げてしまった。だがすぐにその答えは出る事となる。
「答えは『いいえ』です」
それが彼女が痛感する現実であった。
彼女はこの14年の人生の中でも不条理な目に遭って来たのだ。特に理不尽な母親の存在が極め付きとなっていた。
そして豊姫は続ける。
「そう、それが現実よ。悲しい事だけれど」
「……」
そんな豊姫に対して、勇美は無言で受け止めるしかなかった。
しかし、彼女は疑問に思い質問した。
「でも、それと豊姫さんの事はどう関係あるのですか?」
「それはね、依姫の
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