三・五章 あなたは生き残りのドラゴンの息子に嘘をついた
第45話 あの記憶は幻ではありません
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ていると思います! あなたはそれくらい力がある人なんでしょう!? 勝手なお願いなのはわかっています! でもお願いします! 俺らを、世界を、その力で助けてください!」
額が地にめり込む。いつのまにか流れていた涙が、硬い地面を濡らしていった。
「アランさんの故郷のことは! 俺でよければ一生謝り続けます! だからお願いです! 一緒に来てください! このとおりです! お願いします! お願いします! お願いします!」
シドウは何度言ったのかわからないくらい、大声でお願いしますと言い続けた。
……乱れた亜麻色の髪の上に、手が乗るまで。
「――!」
それは一度だけ、だがふわりと柔らかく、優しく乗った。髪越しでも温かい。
彼のものであることはすぐにわかった。
驚いて顔をあげると、すでに赤髪の青年は横を通り過ぎていた。
ゆっくりと、彼はデュラのもとへと歩いて行く。
その足取りはふらつき、背中のマントは汚れていたが、どこか凜然とした後ろ姿だった。
シドウは追わなかった。
アランが母親デュラの前に立つ。
デュラは横から顔を向けていたティアに一つ小さくうなずくと、姿勢を正した。
「赤髪の人間よ――」
「おっと。あなたの謝罪は受けません。息子さんにも謝らせません。私のちんけなプライドです。尊重してくださると嬉しく思います」
アランはデュラの言葉を遮ると、続けた。
「逆に私からの謝罪と頼みを受けていただきたい。私はあなたの息子さんによこしまな目的で近づき、行動を共にしていました。どうかお許しください。
そして、これからあなたの息子さんが大きなお仕事をされようとしていますが、私がそれに同行することを許可いただきたく思います。今度は、仲間としてね」
シドウからはアランの姿は後ろ側しか見えない。
だが確信した。きっと今は、記憶にあるものと同じ微笑を浮かべているのだろう、と。
「是非、母親としてお願いしたい」
お互いに頭を下げる両者。
シドウの全身が、やっと緊張から解き放たれた。
後ろに寝転がる。
空はいつの間にかところどころ雲が切れており、光が差していた。
「シドウ、お疲れさま。でも休憩するならこれ着てからにして」
ティアが近くに来たようだ。
「……あ、そうだね。ありがとう」
全裸であることを忘れていたシドウは起き上がり、顔を半分逸らしている彼女から着替えを受け取った。
気が抜けたせいと急激な変身解除をしたことによる負荷のせいか、急速に襲ってくる眠気。それに耐えながら、下の服を履き、上の服に頭を通す。
彼女のほうを見ると、ニヤニヤしていた。
「ん、何?」
「シドウってさ。人間の姿でも大きな声
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