三・五章 あなたは生き残りのドラゴンの息子に嘘をついた
第45話 あの記憶は幻ではありません
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アランが手のひらをシドウに向けた。
「これで終わ――」
彼の言葉が、途切れた。
その濃い碧眼が、見開いた。
火魔法の爆音が……
起きなかった。
代わりに鳴り響いたのは、鈍い叩打音。
アランの黒服の中央に、人の拳、人間態のシドウの拳が刺さった。
シドウはドラゴン態を解除して攻撃を繰り出したのである。
赤髪の青年が、後方に吹き飛んだ。
大きな岩の壁面中央に背中から叩きつけられ、破片が飛び散る。
そのまま岩肌を滑り、地面へと落ちた。
シドウは人間態のままゆっくりと近づくと、すぐ前に立った。
「アランさん。魔法撃てたのに……撃ちませんでしたね」
岩を背に長座するような姿勢でだらりと下がっていたアランの首が、動く。
赤い筋がつたう顔で、シドウを見上げた。
「まさか……変身を……解くとはね……。人間の姿のあなたを見たら……撃てなくなってしまいました」
そう言うと、その口からゴボっと血が噴き出した。
「やっぱり、アランさんは優しい人なんです」
シドウは続けた。
「実は俺ら、ここに空から直接来たんじゃなくて、麓の登山道から来たんです。倒れていた兄や姉も見ました。誰も死んでなかったです。森も焼けていなかった」
「なるほど。そこから見られていたわけですか……。私の負けです。私の復讐の旅は……ここで終わりですね」
「安心してるんでしょう?」
「そうですね……全部あなたやティアさんの言うとおりだったのかもしれません」
アランはそう言って、目を伏せた。
ここでシドウが彼から目を離していたら、間に合わなかっただろう。
だが、シドウは顔を逸らさなかった。それが幸いした。
彼が腰の剣を抜き、自身の首に当てようとしたからである。
シドウはすぐに彼の手を払った。
彼の剣が回転しながら飛び、硬い地面にぶつかって乾いた音を立てた。
「だめですって!」
「もう終わりです。死なせてください。私は今日のためにここまで生きてきたようなも――」
「だめです!!」
シドウの声が大きかったせいか、アランの言葉が止まる。
「お願いです! 俺らはこれから昔の魔王城に行きます! 行って、アンデッドの実験をやめてもらうよう頼んでくるつもりです! でも俺、向こうに行ってもできるだけ乱暴なことをしたくないです! 甘いと言われるかもしれません! でもできれば平和に解決したいです! それにはきっと力が必要です! 俺らだけでは足りないかもしれません! だからアランさんが必要です! お願いします!」
自分でも気づかないうちに、シドウは彼の前で土下座していた。
「いや、俺らだけじゃない! 世界があなたの力を必要とし
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