第五十九話 新世界からの手紙
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ウッド村を引き払い、フェイスチェンジの指輪をしてロサイス港からラ・ロシェールまでの定期便に乗りトリステインへと向かった。
ベティも、ヌーベルトリステイン行きのフネが出るヴァールダムまで同行し、短い間の共同生活は終わりを告げた。
ヴァールダムに到着した三人に、いよいよ別れの時がきた。
「テファちゃん向こうでも元気でね……」
「うん、お姉さんもさようなら」
「ベティさん、今までありがとう。フランカさんにもよろしく伝えてね」
「勿論ですよぅ」
ベティはしんみりしながらも、手を振って二人を送り出した。シャジャルとティファニアも手を振り返し、ヴァールダム・新トリスタニア間の定期便用に新造されたクリッパー船に乗り込んだ。
定期便と言っても、ご丁寧に『新世界行き』とは書かれておらず、『アルビオン王国ロサイス行き』と書かれており、途中まではロサイスまでの航路を取るが、その後進路を変え、アルビオン大陸を北側に迂回し、新トリスタニアへの航路に入ることになっている。
……
シャジャル親子が、ヴァールダムからの定期便に乗っている頃、モード大公は居城に戻り家臣達にあれこれ指示を出していた。
実は最近、アルビオン王国では重大な出来事が起こっていた。
反トリステインの急先鋒の空軍卿が解任されたのだ。
解任された詳細はというと、アルビオン王国軍部、取り分け空軍卿は同盟国であるトリステインに大きく水をあけられた事を悔しがり、
『同盟の主導権を取り戻す為、アルビオン王立艦隊の栄光を取り戻す為、我々は大艦隊を作らなければならない』
と、気は強いが頭は弱い貴族達を煽って、大規模な建艦計画を実行していた。
だが、彼らは金の出てくる魔法の壷を持っている訳でもなく、建造の費用を当てるに際し、財務を取り仕切る大蔵卿を取り込み、無理矢理建造費を捻出させた。
これにより国庫は空となり、更には備蓄していた食料を売ってしまい、蔵には僅かなカラス麦しか残っていない状態になった。これでは冬を越すには明らかに足りない事は子供でも分かる程度の備蓄量だった。
国王のジェームズ1世は、国庫を省みない空軍卿の暴挙に大いに怒り空軍卿を罷免し、空軍卿は前空軍卿となり領地に蟄居される事となった。更に大蔵卿も解任され、アルビオン国内に綱紀粛正の暴風が吹き荒れた。
建艦計画も中止されたが時すでに遅く、空っぽの国庫と僅かな備蓄、建造途中で中止となりドックに放置された船体のみの軍艦。そして貴族達の不満が残った。
金に困れば平民から搾り取るのは、昔から変わらない権力者の習性だ。貴族達はそれぞれの領地で重税を課し、民衆は貴族とジェームズ1世の治世に怨嗟の声を上げ始めた。
モード大公は、王室と貴族達の不和を敏感に察
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