第五十九話 新世界からの手紙
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「……上手く事が運べば良いけど」
「何か不安な事がお有りで?」
「……そうねぇ」
カトレアは押し黙り思考をめぐらせた。
新婚旅行の際に、モード大公の人となりを持ち前の直感で読み取った時に、大公が妾のシャジャルにかなり入れ込んでいた事が分かった。カトレアの心配は、モード大公がお気に入りのシャジャルを、そう簡単に手放すかどうか不安だった。
☆ ☆ ☆
アルビオン王国内のウェストウッド村の農地では、収穫の季節を迎えていた。
深い森の中にあるウェストウッド村は、稀にしか人の行き来がない為、人を隠すのには打ってつけの場所だった。
メイドコンビの一人ベティは、シャジャル、ティファニア親子の護衛の傍ら収穫の手伝いをしていた。
「お疲れ様、ベティさん」
「お疲れ様です」
採ったばかりの桃林檎をカゴに積み込んで、農婦が着る様な粗末な姿のシャジャルがベティに挨拶をした。粗末な姿でもその美しさは衰えることは無い。
ベティも、いつものメイド服から作業着に着替えていた。
「ベティさん、麦の状態はどうでしたか?」
「あ〜、芳しくありませんね〜」
今年は、例年にない冷夏のせいか、作物の生育はよろしくない。
ウェストウッド村に隠れ住む三人は、モード大公の支援の他にも、基本的に食料を自給自足で賄っていた。お金が必要なときは、母屋に備え付けられていた古い織機を使って毛織物を作成し、ベティかフランカが近くの町に足を運び手織物を売って生計を立てていた。
夏を過ぎても気温は正常に戻ることは無く、アルビオンの国民全体が不安そうにしていた。
実は、この気温の低下にはカラクリがあった。半年前にドゥカーバンク海域でマクシミリアンと北海の王が激突した時に、北海の王の精霊魔法でドィカーバンク近海の気温が氷河期クラスにまで下がった。マクシミリアンの破壊光線で精霊魔法は効果を失ったはずだったが、その時の低気温の影響が尾を引いているのか、ドゥカーバンク海域の気温は例年ほど上がらず、ハルケギニア全土で冷夏となり、各所に影響を与え始めていた。
「そう……ちゃんと冬が越せるか心配ですね」
「いざとなれば、トリステイン(ウチ)が何とかしますよ」
「ありがたいけど、そんな安請け合いして大丈夫かしら?」
「だ、大丈夫ですよぅ」
「まあ、越冬用の蓄えなら多少は有るから心配しないで。それよりも、早い所収穫を済ませてしまいましょう」
「そうですねぇ」
にこやかに語らいながら、二人は収穫業に戻った。
海上から三千メイルの上空を漂っているアルビオン大陸では、それほ
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