第五十九話 新世界からの手紙
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、カトレアに華が戻った。
「良かったですね、王太子妃殿下」
そう言ってフランカは、カトレアに手紙を差し出した。
手紙を受け取ったカトレアは、レターナイフでの封を切ると、手紙と一緒に写真と押し花のカードが入っていた。
「あら、これは……」
写真には、マクシミリアンと地平線の彼方まで見える大草原が描かれていた。
押し花は北米原産のコレオプシス・ムーンビームというキク科の花だ。
爽やかなレモンイエローの花びらに、鼻を近づけると押し花カードの裏にはマクシミリアン直筆で『新世界より愛をこめて』と書かれていた。
「……マクシミリアンさま」
「……」
写真と押し花カードを胸に抱くカトレアを見て、フランカはそっと部屋から出て行こうとした。
「あ、待ってフランカ」
出て行こうとしたフランカはカトレアに呼び止められた。
「これから、お返事を書かこうと思うんだけど、ヴァールダムに寄航しているフネはどれ位まで留まっているのかしら?」
「申し訳ございませんが、そこまでは……一両日中に確かめておきますので、暫しお待ちを」
「ありがとう、よろしくね」
「畏まりました」
フランカは深々と頭を下げると、チラリとカトレアの方を窺った。
「王太子妃殿下、報告しようか迷いましたが、一つ報告がございます」
「なにかしら?」
「アルビオンに派遣されていたベティが、数日中に帰国するそうです」
アルビオン王家の連なるモード大公の妾、エルフの女性シャジャルとその間に生まれた少女ティファニアの秘密を知ったマクシミリアンとカトレアは、メイドコンビに隠れ場所のウェストウッド村へシャジャル母娘の護衛をとして派遣されていた。
「どういう事かしら? たしか二人は三ヶ月に一度の割合で交代するはず……ねえフランカ、交代にはまだ間があったはずよね?」
「はい、そうだった筈なのですが。ひょっとしたら、王太子殿下の手紙に何か書かれているかもしれません」
「そうね、何か書いてあるかもしれないわ」
カトレアは、封筒に入った手紙を取り出して読み始めた。
「……」
「如何でしたか?」
「マクシミリアンさま……」
手紙にはこれでもかと、口説き文句が書かれていて、カトレアはうっとりした顔で頬に手を当てた。
「王太子妃殿下、御気を確かに」
「あらあら、ごめんなさい」
気を取り直して、手紙を読み直す。
目的の文面は、しばらくして見つかった。
「……マクシミリアンさまは、シャジャルさんとティファニアちゃんを、新世界に呼び寄せる為にモード大公宛に手紙を送ったと書いてあったわ」
「王太子殿下の指図でしたか。それならば一安心ですね」
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